【宮崎〜鹿児島】ちょっと自転車で神話の里を走り回ってきた【霧島温泉郷〜安楽温泉〜鹿児島空港】

神楽坂つむり

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知らない天井だ。

朝起きてすぐに違和感があった。
呼吸をするとほのかに香る硫黄の匂い。
知覚の中でも匂いは記憶や印象を起こすのが特に早い気がする。

ここは鹿児島県、霧島温泉郷にあるとある民宿。
温泉旅の始まり始まり。

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まずは駆けつけ一杯、ではなく起きがけ一温泉。
温泉地に宿泊する楽しみと言えば、朝の温泉。こればっかりは欠かせない!

半分寝ぼけながら、瞼も閉じた状態で、お風呂に向かう。
民宿だから温泉と言ってもその見た目はごく普通の家庭用のお風呂とそう変わらない。
洗い場こそ3箇所あったけれど、脱衣所やそこに至る廊下は一般家庭そのものだった。
だけどしっかりお湯は温泉で、しかも源泉掛け流しだった。
温泉旅館のように温泉に入るまでのプロセス全体で盛り上げに盛り上げて温泉に浸かるのも贅沢だけれど、こう言うなんて事のない日常と変わらない雰囲気の中で普通に温泉を楽しむことができる(しかも貸切プライベート)のもまた贅沢だと思う。むしろこっちの方が贅沢じゃないだろうか、とさえ思える。

温泉に浸かって朝からリフレッシュした後は、お宿の人と湯上りに談笑してから、チェックアウトを済ませた。この日は朝ご飯はついていないプランにしていて、理由は温泉地ならではの朝から温泉料理が食べられる場所があったからだった。

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小さな道の駅のような「霧島温泉市場」に向かう。向かうと言っても目と鼻の先で、1分もかからなかった。懸念していた寒さも全くなく、むしろ暑いくらい。半袖とは言わずとも、長袖を少し捲りたいくらいには暖かい朝だった。

市場は霧島温泉郷の中心地にあって、少し離れた民宿から向かうと、町の方方から湯気が立ち込めているのが見えた。まるで沿岸地域の工場群のように、あちこちから白い湯気がもくもくと上がっていた。すごいエネルギーだ。絶える事がない。

市場にはまだ観光客もまばらだった。
そこでいただくのは・・・

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温泉グルメ!
温泉まんじゅうや、温泉卵、さつま芋などなど。
朝ごはん代わりにたっぷりといただくことにした。熱々の卵に塩を振ってかぶりつく。間違いなく美味しい。思わず2個食べてしまった。天気は快晴で、暖かく、朝から温泉に浸かってこうして温泉グルメをゆっくりと楽しめている、その事実だけでもう大満足だった。

けれどこれでは終わらない。
せっかく温泉地に来たのだから、温泉にはもっと入っておきたい。
と言うことでこれまた市場から程近い場所にある「前田温泉 カジロが湯」を訪れた。


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大きな平家の三角屋根が目立つ建物で、駐車場もとても大きく、これはたくさんの人が訪れるんだろうな、と言うのが一目で分かった。私が到着したのはまだ早朝だったせいか、車もまだまばらだった。

外の券売機で入浴券を買うシステムで、確か390円とかだったと思う。安い。受付の人にその券を渡す。建物に入るといきなり脱衣所があり、その次の扉はお風呂だった。とてもシンプルだ。温泉に入れさえすればそれで良い、と言うメッセージを感じる。こう言うシンプルさはとても好きだ。

地元の人がお風呂から上がって来たところで、知り合いじゃないだろうけれど、二人で話をしていた。自転車旅をしていると、銭湯の脱衣所というのは一種の情報の坩堝だと感じることが結構ある。この日もそのおじちゃん二人組は農作物の話や他の銭湯の話をしていた。話の中で出てきた温泉地を頭の中でメモをして、いつか訪れてみたい場所として覚えておくことにした。

温泉は源泉掛け流しで湯の花が浮いている白濁湯だった。とても良い。九州の温泉はTHE温泉と言う感じの色の付いた濃いめの温泉が多くて、個人的にはとても好み。

本日二回目のお風呂を堪能して、さて…どうしようか。と考える。
正直、もう、走る気がない。
今からえびの高原をヒルクライムするだとか、桜島まで下って鹿児島市内を散策するとか、そう言うプランは一切浮かんでこなかった。ここまで来ると飛行機の時間に向けて、如何に有意義な時間を過ごしつつ、幸せなまま旅を終えられるかに思考回路が切り替わっていた。

地図を見ていて思い出す。
3年前に訪れた事のある「きりん商店」さんがちょうど良い場所にあることに気づいて、迷わず向かうことにした。


当時の記事はこちら。詳しくはこの記事を読んでいただければ分かると思う。


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自分で自分の聖地巡礼をするようなことが増えてきた。
訪れた事のある場所ばかりだから仕方ない。仕方ないと言ってるけれど、別に嫌なわけじゃなく、むしろ当時のことを思い出したり、当時と今のギャップを認識したり、あれこれと思い返すこと、新しく思うことがあったりして、とても有意義だったりする。

時間のスケールを実感して主観と客観を交えて考察するにあたってこの自分聖地巡礼は価値のあることだと最近とても感じる。学生時代から続けてきた自転車旅の記録と記憶は間違いなく自分にとっての大きな財産になっていると気付いて嬉しくなる。

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そんなことをきりん商店さんの自家製ぜんざいを頂きながら思い耽る。
ああ、良い時間を過ごせている。

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3年前と変わったことといえば、可愛らしい猫がいたから、猫好きの人も是非訪れて見てほしい。あのヤンチャさと人懐っこさ、そしてお店の雰囲気的に、いつか岩合さんの「世界ネコ歩き」に登場するんじゃないだろうかと、勝手に期待している。

ご主人とその奥さんと、談笑しつつ、次の行き先の相談をしてみることにした。

「この辺りでおすすめの温泉はありますか?」

と一つ質問するだけでいくつもの返答をいただけるのが九州南部の魅力の一つだと思う。
この時も例に漏れず、複数箇所をランキング形式で教えていただいて、その中でも特に気になった「安楽温泉 鶴乃湯」に向かうことに決めた。他にも気になる温泉をたくさん教えていただいたから、次に来た時にはその温泉も堪能してみようと思う。身体と時間が足りない。

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霧島温泉郷のすぐ近くには安楽温泉、妙見温泉と言った温泉地がたくさん点在している。霧島のネームバリューが強いけれど、実際に訪れてみると純粋な温泉の質(お湯のクオリティだけではなくて、建物の佇まいやロケーション、入浴システムや場の雰囲気etc)ではこれらの温泉地も引けを取らないというか、見方によっては断トツで優れている、とさえ思えた。


「安楽温泉 鶴乃湯」はそう思えるくらいの魅力たっぷりの温泉だった。

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個人的にはここ数年でトップクラス。建物の佇まいも、入り口を開けた時の世界観も(そう、世界観という言葉がぴったりの昭和初期にタイムスリップしたかのようなアナログ空間が広がっていた)脱衣所の注意書きも、そして何より温泉自体も、素晴らしいの一言だった。

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お湯も純温泉。つまり何も手を加えていない。これが実は結構珍しい。
消毒なし、加温もなし、加水もなければ、循環も、濾過もなし。完全無欠の100%。内湯は湯船に至るまで空気に触れずに直接源泉に触れることが出来る。

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外は半露天風呂で、目の前を流れる天降川を心ゆくまで堪能することができる。


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温泉を心ゆくまで堪能するならここしかない、と思った。しつこくとも二回目三回目とももしこの地を訪れたのならここだけは必ず立ち寄りたいと思った。

さて、三回目の温泉にして旅の締めくくりにふさわしい温泉を堪能した後は、Tシャツ一枚になって鹿児島空港までをゆっくり走ることに。もはや思い残すことはなし。

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道中、これまた3年前に訪れた嘉例川駅にも立ち寄って、当時の記憶を思い出した。

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そして無事に鹿児島空港にゴール!
こうして宮崎空港から始まる3日間の自転車旅が終わった。

終わってみれば大満足な旅だったと思う。
九州南部の景色、文化、人々、グルメ、温泉、そして神話の里の異名に恥じない歴史的な建築物や曰く付きの場所の数々。
きっと遠い未来、またふと想い出して訪れたくなるかもしれない。
外の時にはまた、今回訪れることが叶わなかった場所の穴埋めをしよう。

終わり。


   
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