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【宮崎〜鹿児島】ちょっと自転車で神話の里を走り回ってきた【日南〜都城〜霧島】

神楽坂つむり

九州, ロングライド, 写真, 自転車,

知らない天井だ。


時刻は8時。よく眠れた。

場所は…宮崎県。日南市。


カーテンを開けるまでもなく隙間から差し込む太陽光の明るさで分かった。

今日は良く晴れそうだった。


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二日目スタート!

自転車旅の朝。


民宿やホテルに泊まる時にはできるだけ朝食付きで予約をするようにしている私。コンビニで買って食べるとか、朝営業している食堂を探して食べる…とかも出来るけれど、なんだかんだ朝起きた場所ですぐ食べられるのが一番良い。

それにバイキング形式とかだと沢山食べられて自転車旅的にはコスパが良かったりする、ので。


チェックアウトを手早く済ませる。季節は冬。南国とは言えさすがに寒いか…?と思って着込んで外に出たものの、拍子抜けだった。暖かい。大阪とは全然違う。ぽかぽか陽気とまでは行かなかったけれど、日中にはそうなりそうな雰囲気があった。


‥と思いきや違う。そうじゃない。これは‥寒くなりそうだと思う要素があった。強風だった。

前日、宿のベッドの上でいつもは見ないテレビを見ていると、降灰予報が映し出されていた。なるほど九州南部。隣は鹿児島県。そこを象徴する桜島から常に吹き上がる噴煙、火山灰が風で流れる方向が、「これがここでは日常ですよ」と言わんばかりに当たり前のように画面に映し出されていた。何故かこの時「ああ、九州に来たんだな」と改めて実感した。ローカルテレビには不思議な魅力と実感がある。これがあるから旅先の宿で見るテレビが結構好きだったりする。



気になって天気予報を改めて調べると風速10mと表示されていた。とんでもない強風だった。しかも向かい風予報だった。つまり36㎞/hの空気の塊が一日中私の進行を阻むことになる。


「やれやれ・・・」


と思いつつ、進むしかないのは自明だったので早々に諦めて漕ぎ出すことに。自慢じゃないけれど強風向かい風時の走り方は心得ている。それは無駄な抵抗はしないこと。これに尽きる。向かい風とは言うなれば常にヒルクライムしているようなものだ。重力に引っ張られるのと向かい風を受けるのでは感じ方が全然違うけれど、体力マネジメントという点では同じことが言える。


向かい風の性質が悪いのは、ヒルクライムと違ってご褒美がないこと…。ヒルクライムならその先にはダウンヒルが待っている。使った体力と時間をある程度取り戻すことが出来る。けれど向かい風は単なる消費でしかない。やれやれ、だ。けれど仕方ない。自転車旅をするなら、この風とは上手く折り合いをつけて付き合うしかない。


結局この日は100㎞程度走って、そのうち98kmくらいは向かい風だったと思う。やれやれ。



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さて、まず向かったのは飫肥(おび)の城下町。

日南市の中心地からは10㎞もない、隣町と言って良い場所にそこはあった。

飫肥の城下町は、日本史を学んで以来、是非一度ゆっくりと散策したいと思っていた場所だった。過去に通過したことはあるけれど、本当に通過しただけだった。ので、とても楽しみにしていた。


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実際に訪れてみるとその規模に驚いた。通りはもちろん路地裏や気になった建物、神社、お店を訪れて少しずつその土地への理解を深めていく。

よくこういう城下町や小京都と呼ばれる場所を訪れると、町全体に対してほんの一区間だけがそういう雰囲気だったりすることが多い。もちろんそれでも十分見応えがあるのだけれど、ちょっとがっかりすることも珍しく無かったりする。


そういう意味では飫肥の城下町はまさに町全体が城下町そのものを形成していた。

一部だけではない。メインストリートは勿論、路地を2本、3本と渡っても同様に城下町の雰囲気に包まれていた。まるでタイムスリップしたかのような感覚に陥る。カメラ片手に…1日かけて、あるいは一泊二日でゆっくりと細部まで堪能したいとさえ思えた。


歴史的にも価値がある建物が数多く残っていて、見応えがある。

観光地としての派手さはないものの、一つ一つの建物に不思議な説得力と迫力を感じることが出来た。



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特に見応えがあったのは飫肥城跡。

土塁と石垣は一見の価値があると思う。

詳細は現地で確かめていただきたい!


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さて、一通り散策を楽しんだ後は…とあるお店を訪れた。

宮崎から鹿児島に向かう旅の様子をTwitterでいつものように投稿していたら、その様子を見た友人がLINEでおすすめのお店を教えてくれた。(わざわざ恐縮です!)

地元を知る人がおすすめするお店ほど間違いないものは無い。



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玉子焼きの概念が変わるお店だった。


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厳密には…これはプリンでは??と思うくらい、けどプリンでもないのは確かだった。

つまり…今まで食べたことが無い食べ物だった。それだけでも訪れる価値があった。

静かな店内で…お店の人と話をしながら、窓越しに知らない町を眺める。良い時間だな…とシンプルに思った。


さて、ここからは…戦いの時間だ。

都城までの40㎞。山岳地帯。向かい風。

覚悟を決めてゆっくりとペダルを漕ぎだした。


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この距離を山越えかつ向かい風となれば、無理は禁物。

無理は必ず返ってくる。そのまま返ってくればまだ良い方で多くの場合は利子が付いて返って来る。


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峠の上はトンネルだった。ツーリングをしているとよくある話。
ヒルクライムをして県境などの境目を越える際にこれまたよくあるパターン。山の上にはトンネルが。谷の下には橋が架けられていて、そこを越えることが幾度となくある。その場所に道路を通した現実的な理由が見えたりするのも面白い。

長い長いダウンヒルを終えて辿り着くは都城。ここではお昼休憩をすることに。
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綺麗な街並みだった。大阪とはやっぱり違う長閑さ。


歴史の勉強がてら都城島津邸にも立ち寄ることに。

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島津といえば鹿児島のイメージが強いけれど宮崎とも縁が深く、ここでは島津の歴史や個々の成り立ちをガイド付きで学ぶことができる。驚くのが…いや、当然なんだけれど、そこまで遠い昔の話じゃないということ。せいぜい1世代前。明治12年(1879年)と言うと145年前、その時に作られた旧建物の部材も使用されているこの建物。歴史的価値は当然ながら、時の流れを感じることができる良い場所だったので、機会があれば是非訪れてみてほしい。

その後は再び…今日の想定ゴール地点である霧島温泉郷まで山越えということでしっかりと補給をすることに。そもそもここまで一つの大きな山脈を超えて、かつ常に向かい風ということでそこそこカロリーを消費していた。というわけで。
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拉麺 べっぷんち にてラーメン!九州を感じる豚骨スープがたまらない。もちろん替え玉もして失ったカロリーとこれからのカロリーをしっかりを補給補給。

そして再び始まる山越え。山岳コース。後で知ったけれど都城から霧島温泉郷までは、もっと楽なコースがあったらしい。下調べを碌にしないせいでとりあえず良さそうな道を選んだ結果、なかなかハードな山越えをすることに。とは言え無理しなければ大丈夫。マイペースにペダルを漕げば日本中どこだって走ることができるのが自転車の魅力だと思う。

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どんどん自然が深くなっていった。人工物が極端に減り、道路くらいしか文明を感じない場所もいくつかあった。こういうところを走っていると、まだまだ日本って広いというか、知らない世界がたくさん広がっているんだなぁと実感する。隅の隅まで知ることなんて絶対出来ない。だからいつも新鮮な気持ちで旅が出来る。道中の茶畑と桜島の組み合わせを見た時には、かつての鹿児島旅を思い出して嬉しくなった。今や静岡県と並ぶ一大茶葉生産地である鹿児島。知覧茶と霧島茶の美味しさは、この舌で何度も堪能した。


さて、楽しみにしていた「溝ノ口洞穴」にたどり着いた。

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ものすごく雰囲気のある空間が迎えてくれた。自転車を止めて歩くとすぐに迎えてくれる小さな鳥居。小さいのに、周りに人工物が何もないからだろうか、あるいは巨大な岩の壁に両隣を挟まれている空間だったからか、異様な雰囲気を放っていた。この場所のスペシャルな景色が見たくて、わざわざこんな山奥までやってきた。自転車を見ることは一度もなかった。

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洞窟内から見るこの景色。ものすごかった。神話の里と呼ばれる理由が良くわかる場所だった。

この溝ノ口洞穴は火砕流堆積物が侵食して出来上がった洞窟であり、入り口の幅は14.6m、高さは6.4m、そして全長は209m。相当大きな空間でこの中にぽつんと一人立つと、正直かなり不気味だった。こうして入り口側を見れば明るさを感じるのだけれど、反対側は完全な闇で、ライトがないと自分の手も見えないくらいだった。湿度が高くてムワッとしており、耳を澄ますと何かコオオオオという音とともに、かすかにコウモリの気配と音を感じることができた。立ち入り禁止の場所まで行くと、その姿を無数に確認することができて、これがなかなか衝撃体験だった。

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多分…訪れる季節や時間帯によってこの空間の感じ方は全く異なるものになるんだぁと思う。よく晴れた夏の昼頃なんかに訪れたらそれこそ…白昼夢のような体験が出来る気がする。夢か幻か…みたいな。そういう雰囲気がここにはあった。宮崎県、奥深い。

さて、ここからはゴールまでひた走る。
夕暮れの時間も迫っていた。けれど急ぐ必要はない。
じわじわと標高を稼いでいく。相変わらず向かい風だから、やっぱりペースは上がらない。
ペースを上げる必要はない。落とさなければ良い。前半のマイペースがしっかり効いていて、この時間になっても午前中と同じように走ることができたし、疲れは一切なかった。これが前半飛ばしていたりすると筋肉が悲鳴を上げたり、疲労感が出て、この時間でしんどいとなりがち。

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景色雄大だった。九州南部を感じる。人生の合間に見るべき景色。

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自販機でこういうご当地飲み物を見るとついつい買ってしまう。コンビニや商店にはなかったりするのに、自販機にだけあったりするから、チェックする癖がついてしまった。

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太陽がいよいよ隠れそうだった。山岳地帯だ。いくら九州とは言え、陰るのが早い。

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そして霧島神宮にも参拝をした。夕暮れの時間帯で境内全体が夕焼けに照らされてとても幻想的だった。この時間でも人は多く、さすが県内最大規模の神社だと実感した。

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露天もたくさん立ち並ぶ。人の声と風の音に混じって、どこからか祭囃子が聞こえて来た。

霧島神宮から霧島温泉郷までラストの走り。ここがびっくりするくらい寒くて、今回持参して服の全てを着込むことになった。さすが霧島。標高が高く冷え込み具合はとても九州南部とは思えない。

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ギリギリまだ日が残っている時間帯だった。
今日の宿は晩御飯がないところだったから、適当にあたりで良さそうなお店を物色してあたりをつけて入るとこれが大正解。

さつま路という定食屋。名前からして鹿児島の美味しい食を堪能できそうだった。

佇まいは小さな一軒家のようで、通りから少し外れているから目立たないものの、暖色の照明がぽわっと灯っていてどこか暖かい雰囲気を外観からも感じることができた。ガラガラとドアを横に開けると既に奥の座敷からは賑やかな声が聞こえてきた。それが薩摩の言葉だった。鹿児島に来たんだなぁということを実感した。やはり地元の人を感じると、一気のその土地に来たことを実感できる。

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お店の雰囲気も料理も申し分なかった。旅の夜としてはこれ以上望むまい!お目当ての鳥刺も美味しくいただくことができた。そして何より全てが安かった。良いお店に巡り合うことができて一日の締めくくりは薩摩の食材に包まれた。

お宿は民宿で、温泉付き。宿に着くと民宿らしいおもてなしと、少しばかり旅と鹿児島の話で盛り上がった。この時間も私は大好きで、知らない土地でこうして宿の人と話をしていると自分が旅人なんだ、ということをものすごく実感する。過去の経験上、ほぼ間違いなく、この時間で得られる情報はインターネットを探しても見つかることがなく(調べようと思って調べればヒットするけれど、そもそも調べようという発想に至らないと言う理由で)とても貴重なもの。明日どこへ行くのかも、この10分程度の談笑で決まったように思える。

「温泉なのでいつでも入れますよ」と言う嬉しい案内もあった。普通のお風呂のように温める必要がないと言うこと。ここは九州、鹿児島、霧島温泉郷。温泉を最後に堪能してこそ旅の締めくくり。

こうしてとても濃厚な旅の二日目が終わった。
明日も楽しみでいっぱいだった。

続く。






   
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