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【三重県】伊勢の穴場 伊勢河崎を巡るゆる旅サイクリング【半分の月がのぼる空】

神楽坂つむり

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「そうだ、伊勢に行こう。」

そう思った翌日のお昼には伊勢にいた。

大阪と伊勢は隣町みたいなものだ。


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本当は自走するつもりでしたが起きて時計を見たら朝の9時。

「おかしい、7時には起きて走り出していた予定なのに・・・」

時計の時刻を見たその瞬間に輪行しようと頭を切り替えました。

仕方ない仕方ない・・・別に自走にこだわっているわけではなかったし、輪行となるとそれはそれでまた新しいプランが頭に浮かんだ。そしてそのプランを妄想しているうちにどんどんワクワクしてきた。輪行で浮いた時間と体力を使えば、また他の場所に行く事ができる。

ずっと気になっていた場所がいくつかあった。
私の頭の中には常に「行きたいところリスト」があって、 隙があればそこに行こうと考えている。逆に言えば隙間時間があればすぐに行けるわけで、今回寝過ごした時のように急にプラン変更が必要になっても対応できると言う、まあ使い所があるようでないようで、でもなんだかんだ役に立つことが多いライフハックの一つだと考えています。

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大阪上本町駅からさくっと輪行。
それにしても近鉄のこのダイヤの詰まり具合、あまり知られていないけれどかなり密な気がする。
2分おきに違う種類の電車がガンガンやってくる。鬼のダイヤ管理。

電車の中ではいつものように Kindle で本を読む。
この時間が好きだ。
移動する列車の中で本を読むというのはそれだけでロマンがあるように感じます。
今回の旅のお供は森博嗣の「冷たい密室と博士たち」これを読み返すのは6年ぶりぐらいだろうか。森博嗣さんの作品は「すべてが F になる」と思われていることが多いけれど、実はこちらは一作目。個人的には S & M シリーズの初期の頃の作品がめちゃくちゃ好きです。

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そして到着宇治山田駅!
もうすっかり慣れてしまったけれど、やっぱり美しい駅舎に見惚れてしまう。初めて見た時は物凄い衝撃でした。「半分の月がのぼる空」が好きで聖地巡礼のために訪れた伊勢。それももう何年前のことだろうか・・・。その時にこの宇治山田駅を初めて見て感動したのを今でも覚えています。細かい装飾が施された駅の外観はいろんな角度から見ることでいろんな発見があります。さすが重要文化財に指定されているだけあって、均整が取れていて美しい・・・。

けれど今回は旅は始まったばかり。ここで1時間も2時間もいるわけにはいかない。


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ちなみに宇治山田駅に到着したのがちょうどお昼頃。12時くらい。

なのでそこそこお腹も空いているということで、いつもの定番のあのお店に行きましょう。

宇治山田駅から徒歩1分以内にあるこちらの「まんぷく食堂」
はい、私のブログを見ていただいている人にはもうお馴染みのお店だと思います。

「いやいや知らないよ」という方のためにざっくり説明すると「からあげ丼」のお店です。
本当にシンプルに説明するとそれだけ。実際に行っていただいてもその通りだと感じてもらえると思います。

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10年経っても変わらないこの店構え。たまりません。

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この店の存在を知ったのはなにを隠そう私が大好きなライトノベル作品「半分の月がのぼる空」その作中で登場したからに他なりません。 
あまりに特徴的な描写に、当時の私は衝撃を受けました。こんなお店が本当にあるんだと思わず疑ってしまうような強烈な印象。放課後の教室でこの作品を読みながら、いつかこの場所に行ってみたいと。
結局自転車を趣味にし始めてから、そして初めての聖地巡礼で伊勢を訪れてから、もうなんどこの店に来たかわからないくらい通うようになりました。

それくらい美味しい。
お世辞抜きでそう。
作品が好きだからという補正も若干入っているかもしれないけれど、間違いなく美味しい。

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興味がある方はぜひ一度ご賞味あれ。
ちなみにお勧めしていくことがひとつだけ。

「必ず空腹状態で行ってください」

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さて、今回伊勢に行きたいと思った一つのきっかけがこれから訪れようとしている伊勢河崎です。

伊勢といえば有名なところは当然伊勢神宮、そしてその参謀であるおかげ横丁、あるいは少し足を伸ばして鳥羽水族館や夫婦岩が代表的なものだと思いますが、今回巡るのはその何でもありません。言うなれば伊勢穴場スポット巡りが今回のテーマと言っても過言ではありません。

伊勢河崎は宇治山田駅から歩いて行ける範囲にある古い町並みです。
その歴史は古く戦国時代末期からと伝えられています。

河崎という名前からわかるように、川がきっかけで発展した交通の要所です。全国各地にそういったかつての交通の要所であったから栄えていた町がたくさんが、ここ伊勢河崎は明治時代末期までその役割を果たしていた街のひとつです。つまり今ではもうその役割は終わってしまいました、その名残が残っている街です。

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かつては伊勢の台所的役割を担い、町人や商人、時には武士や役人が数多くこの街を往来していたと思うと感慨深いものがあります。今ではすっかり落ち着いたレトロな雰囲気だけを残す街となっています。

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勢田川沿いに発展したこの「伊勢の台所」はいくつか特徴があります。

まず一つは川沿いの町ということで、街全体が湾曲しています。水運拠点として発達しただけあって、これからの荷物を効率よく運び入れるために、川沿いに建物が建てられました。
道路も同じように整備され、つまり川の湾曲と町の湾曲が一致しているということです。

実際にこの街を歩いてみるとすぐにそれを実感することができます。
普通に歩いていても気づいたら道路が曲がっていくのです。ただし建物の陰から時折見える川との距離は一定です。これはつまり建物と道路が川と一体となってデザインされているということ。地図で見てもわかるけれど実際に歩いてみるのが面白い・・・!

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もうひとつの特徴は「切妻妻入り」です。
平入りと妻入りという言葉はあまり聞きなれないかもしれませんが、分かりやすく言うと日本家屋ので入口が正面にあるか側面にあるかという違いです。
家の形を長方形と見た時に長辺側に出入り口があるのが「平入り」短辺側に出入り口があるのが「妻入り」。

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この伊勢河崎は「妻入り」を採用した建築物が数多く現存しています。
その理由を考えるのがまた面白い。実際に街の人に聞いたり文献を調べていると、いくつかの理由があることがわかりました。

一つ目の理由は伊勢神宮にありました。
伊勢神宮の社殿や関連する建物を見ると「平入り」の建物がほとんどです。 当時の人たちはこの「伊勢神宮と同じ建築様式を採用することは失礼にあたる」「ちょっとハードルが高い」と考えていたようです。右にならって同じ建築様式を採用するのではなく、一歩身を引いて違う手法を模索するあたりに、当時の人たちの苦労が垣間見られると私は思いました。
ちなみに同じ理由で伊勢ではここ河崎以外でも同様の建築様式の建物を見ることができます。それこそレンタサイクルでも借りて観光ついでに世古巡りをしてみるのも面白いかも。思いも寄らない場所で面白い建築物、路地裏、橋梁、神社仏閣を見つけることができるのが伊勢の魅力。

二つ目の理由としてはやはり川にあります。
川に対して建物をいくつも作ろうとすると建物の短編側を川に向ける必要があります。かといって出入り口が長辺側にあると船で運んできた物資の出し入れが面倒です。建物をたくさん密集して作った時に、出入り口が横にあるとそのぶん通路も確保しないといけません。結果として建てられる建物の数が少なくなり、水運拠点としての機能が弱まってしまいます。

さらに伊勢は昔から水害にさらされてきた町です。
近代においては伊勢湾台風が記憶に新しいですが、海が近く比較的風も強い土地です。そのような場所においては建物の出入り口が短辺側にある方が、建物の強度を保つことができます。ものの強度は大きくなればなるほど長くなればなるほど弱くなります。ただでさえ弱くなる建物の長辺側に出入り口を作ることを当時の人たちは嫌ったのでしょう。確かに短辺側に出入り口を作ることは理にかなっているように思えます。さらに左右の建物との距離を限りなく近くすることができ、これもまた風雨から建物を守るのに適しているシチュエーションと言えます。これが三つ目の理由です。

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この町の存続を考えるともっと人が訪れた方がいいとは思うのでこうしてブログに書いている所存です。まあこのブログ程度で人がたくさん来ることはないと思いますが、それでも誰かに響いてその人がここの土地を訪れて私と同じように当時のことに思いを馳せながら伊勢河崎を回ってもらえると嬉しいなと思うのです。

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もちろん何もないわけではありません。
最近では当時の建物をリノベーションした雑貨屋さんや本屋さん飲食店が続々と登場しています。そのどれもが当時の建物を決して無駄にすることなくその良さを生かしたままアレンジをしていることで、ものすごく良い雰囲気のお店がたくさんあります。

現代風に言うと「インスタ映え」するやつ。
温故知新という言葉をそのまま当てはめられるような素敵なお店だらけです。

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ものすごくいい雰囲気の古本屋さんがあったりします。
覗いてみましたが自転車旅の途中でなければ、5冊ぐらい買ってしまっていたかも・・・・。

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ボードで隠れてしまってますがよくよく読んでみるとめちゃくちゃ歴史がある建物で笑ってしまう。

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これだけ木造建築が多いと火気厳禁。

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川の駅、河崎では実際に建物の中に入ることもできます。
まあ他のお店でも実際に中に入ることができるので、厳密にはここだけではないですが。
それにこの記事で書いていることの半分くらいは訪れたお店の人に聞いたことがほとんどだったりするので、伊勢河崎の歴史や文化に実際に触れてみたい人はいずれかのお店を訪れてみることをお勧めします。
おすすめのお店は特に歩きながら気になったお店に入ってみましょう。

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このまま勢田川に出ることができます。
なるほど、妻入り作りだと動線がスムーズであることが分かります。実際に建物に入ってみると外から見るだけよりももっと具体的にその建物がどうやってそのような構造になったのかがよく分かります。

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丸ポストかつ完全に機能していないポストを見るのは初めてかも。

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勢田川です。

ちなみに正面の大通りから川へと抜ける細い道を伊勢言葉で「世古」と呼びます。
「半分の月がのぼる空」を読んだことがある人であればピンと来るでしょう。世古口とは伊勢ではたまに見る苗字です。きっと路地の入り口に家があったのでしょうか・・・。

伊勢は色んな所で歴史を感じることができます。
その中でもこの伊勢河崎、個人的にめちゃくちゃ雰囲気が好きで、おかげ横丁や伊勢神宮もいいけれど、是非ここも訪れてみて欲しいと思うスポットです。

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自転車でも自転車じゃなくてもカメラ片手にお散歩するだけでも被写体がたくさんあって決して飽きないと思います。
できることなら少しお腹をすかして古い木造建築を改装したカフェでランチを食べたりお腹がいっぱいでも少しコーヒーを飲むだけでも・・・
時間を忘れてかつて水運で栄えていた時代のことに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

と、今回は伊勢河崎の紹介で終わり。
自転車旅としてはまだ序章の序章。
けれど目的はもう達成した。
さて後半戦は一気に南下して賢島方面へ。
ここから先も穴場スポットを巡っていくうちに思いがけない良い場所に巡り会えたり・・・。

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勢田川にて。

続く。


    
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