【天草島原ツーリング】灼熱の島を繋ぐ旅【熊本〜三角〜天草】
自転車, 写真, ロングライド, アウトドア, 九州, カメラ, 島旅,「まさかこれほどまでに暑いとは・・・」
思わず国道沿いにポツンと設置されていた自販機横の木陰に避難した。
天気予報を見ると高温注意報とかいうのが発令されている。
やれやれ。
夏の天草〜島原ツーリング。
灼熱と戦いながらも、ここにしかない景色の数々に、大満足な旅となった。
まず最初にキャンプツーリングにするかどうか、で迷った。
天草〜島原地方は海沿いのキャンプ場が多く、そのロケーションは素晴らしいものばかり。
西方には海が拓けており、水平線に沈みゆく太陽を眺めながらキャンプするなんて最高じゃないか。
という予想の反面、この季節ではそんな悠長なことを言ってられないという予想もあった。
夏と言ったらキャンプみたいな風潮があるけれど、あれは絶対嘘だと思う。
暑くてやってられない。
夜の快適度やルートのアップダウンの多さを考慮してやはり無難に民宿泊にしようと出発前日に決めた。
そうなると装備は最低限でいい。
最終目的地を縛る必要があるのは仕方ない。
「160kmくらいなら余裕で走れるだろう。」
ルートを考えている時はそう思っていた。
熊本駅のホームに降り立った瞬間に、その暑さに閉口した。
つむりは閉口した・・・・!!
目をこらしたら熱線が見えるんじゃないかというほどの暑さだ。
改札を出て輪行解除している間も汗が出る。
こうなるともういち早く走り出して風を受けてしまいたい。
あたり一面を覆う蝉の鳴き声サラウンドシステムの中でいつもより手早く輪行を解除して天草半島に向けてスタートした。
今回の装備。
愛用のオルトリーブサドルバッグには輪行袋と着替え、携帯工具類とサコッシュ。
フレームバッグにはスマホ、財布、鍵、モバイルバッテリーなど。
炎天下の走行ということでボトルは2個体勢。
私的夏の快速ツーリング仕様!
宇土を抜けて国道57号線沿いに西に進む。
緑川〜住吉のあたりはどうも道が狭そうだったから、国道と並行して走っている田園を貫く道を走った。
広域農道。私が地方を走るときによくするエスケープ。
都会は交通量は多いけれど、道がたくさんあったり路肩が広かったりと、実は走りやすいことも多い。
一方で地方道路はそれしか選択肢がなく、しかも歩道がなかったり路肩が狭かったりと、自転車が走ることを想定していないことが多い。
ので、無理矢理走るのではなく、少しずらして走ることにしている。
地図を眺めていると細いなりに1本道が並行していることがあって、そういう道は大抵、交通量は皆無で走りやすい。
もちろん狭い住宅街の中とかはお勧めしないけれど、車に怯えながら走るよりもずっといい。
右手に見えるのは有明海。
内海なだけあって穏やかで優しい印象を受ける。
多島海じゃないから、反対側、長崎県の島原がよく見えた。
明日はあそこにいるのだと思うと変な感じがする。
御輿来海岸を抜けて道の駅宇土マリーナで小休憩を取ることにした。
水も補給食も何もない。
とりあえず三角港に着くまでの繋ぎのつもりで立ち寄った。
まさか日本で一番有名な熊本の「あれ」がいるとは思ってもいなかった。
サイクルラックに自転車をかけて店内に入ると何やらざわざわしている。
「イベントでもやってるんかな?」
と思い奥へ進むと
突然のくまモン!
地元のテレビ番組のロケをやっていた模様。
さらには小学生の遠足集団もきていたようで、もう大騒ぎ状態だったので水だけ買って早々に退散することに。
もっとゆっくり見たかった・・・・w
20分ほど走るとなんだか風光明媚な港が近づいてきた。
上から見なくてもわかる綺麗な入江の形をした港で、面白いのがその入江の入り口のど真ん中に島がポツンと浮かんでいる。つまり蓋をされている。
そのせいか海面は穏やかで、さらには小さな箱庭感がある。
時折、漁船やそこそこ大きな船が往来している。
島と海、町や船を眺めているだけで穏やかな気持ちになってくる。そんな作用がここにはある気がする。
築港130年、明治日本の産業革命遺産と称されるここ三角西港は世界文化遺産にも登録されている。
風光明媚な景色だけではなく、歴史的にも価値の高い場所。
急にお腹がすいてきた。
そういえば今日はまだご飯をまともに食べていない。
てっきり観光施設かと思っていた海沿いの白い建物、いやまあ確かに立派な観光施設「三角開運倉庫西港明治館」というもの。
なんとレストランになっていた。
ちょうど開店時刻だったので入店。
店内の方が涼しそうだったけど、せっかくなのでテラス席にした。
潮風と三角港の美味しい景色が満喫できる素晴らしいロケーションだった。
メニューも熊本らしいものばかりで、私は馬刺三種丼とデザートにガトーショコラを注文。
三角西港に来たら絶対に訪れて欲しいと思えるお店!
店から出ると、あまりの暑さに一瞬足が止まってしまった。
日陰から手を伸ばして日差しに当てるとジリジリする感じがよくわかる。(あまんちゅ!ネタ)
ここで自転車に乗ろうと準備しているとCANON EOS70Dをぶら下げたカメラ女子二人に声をかけられる。
「写真、撮らせてもらっていいですか?」
なぜかモデルをすることになった。いつも写真を撮る側だから、撮られるのはどうも恥ずかしい。
三角港をバックにパシャパシャと撮られてしまった。
いつかどこかでお披露目されるんだろうか・・・。
ここから先は天草パールライン!
天草屈指の絶景道。
「天草五橋」と呼ばれる五つの橋で7つの島を越えていく海峡道路。
しまなみ海道みたいというわけではなく、海の近さや海の広がり、港の雰囲気はやっぱり全然違う。
どんな場所でもよくよく見るとその土地にしかない光景がある。
そういうのを見つけられるかどうか、は自転車旅をする人にとって重要だと個人的に思う。
それにしても暑さが暑い(語彙力
とにかく暑い。
道路脇に設置されている気温計は誇らしげに「36度」と示していた。
もう何も語るまい・・・
大して距離もないのに陽炎が発生し、汗は止まることなく流れ続け、バーテープはもうびっしょりだ。
道の駅有明に避難。
これはもう2〜30kmに一回は休憩しないと身体が持たない。
本当にきつくなる前に休む。
無理をしたら絶対にダメだ。その時は良くても後からつけがくる。
キャノンボールとかだとなんとかなるけれど、酷暑だけはもう気合いやテクニックでなんとかなるものではない。
ソフトクリームと天草の蜜柑を絞ったジュースをいただく。
クールダウンとビタミン補給💪( ¨̮ 💪)
補給は大事!
さて、ここから先は天草の町を超えてからは山岳地帯へ突入することが分かっている。
おおよそ50kmも走れば本日のメインスポットである崎津に到着するだろう。
いつもなら2時間という計算も、今日ばかりは3時間という見積もりに修正した。
おおよそその通りに収まったと思う。
天草から崎津は大きな峠こそないものの、獲得標高は600mに達する。
50kmで600mだから油断はできない。
すでに汗だくだけど、容赦なく登りがやってくる。
斜度はそんなにきつくない。
ペーシングで登り続ける。5%で17km/hくらい。
それでもやっぱり汗が吹き出る。
気づいたらトップチューブが汗で濡れている。
グローブをしない私でもこの時ばかりはグローブが欲しいと思った。
ダンシングをして誤魔化してみる。
身体を振って無理やり空冷作戦。
だめ。
そもそも空気が熱いのだから、意味がない。
こうなったら徹底的に身体を休めながら走る。
いわゆる休むダンシングに加えて、省エネペダリングを心がけて少しでも身体がヒートアップするのを抑える。
く〜〜〜〜楽しい!!'`,、('∀`) '`,、
テンション上がってきた!!!
下りは身体を冷やすチャンス。
登りきる前にボトルの水を頭から被って身体全体を濡らす。
ダウンヒルで効率的に身体を冷やすためだ。
少し重めに踏み込んで一気に速度をあげてあとは惰性で加速していく。
ひと時のオアシス。
旅をしているときはリアルタイムにペース配分を修正していく。
目的は決して急がないため。
どれだけ遅れるか分かっていればそれは予定の範疇ということにして焦ることなく確実にマイペースで進むことにする。
登山するときの計画に似ている。
つまり「トラブルも想定内にしておけばトラブルにならない」ということ。
予想以上の酷暑で思うようにペースが上がらなくてもそれはそれでよしとする。
幸いにもこの季節は陽が長い。
45kmほど山岳地帯を走ったところでようやくコンビニが見えてきた。
地獄に仏とはまさにこのこと。
ポカリ、塩大福、野菜ジュース補給。ビタミンミネラル大事。
時刻は16時。
ここまでくればもう崎津まですぐ。
リアス式海岸のように入りくねった入江沿いに走る。
この辺りは本当に「熊本の最果て」という雰囲気が出ている。
キリシタンの地というのも納得できる。
海沿いを走っていると出会ったのがこちらの灯台!
灯台ハントについてはつい先日の記事に書いたばかり。
国道からは車だと5分とかからないのでアクセスも悪くない。
駐車場はないから路駐する形になるかしらね。
崎津天主堂を見守るように建っているこちらの灯台、初点灯は昭和43年3月25日、9.3mと決して高い部類ではないけれど、真下まで寄れるので見上げればなかなかの高度感。
そしてこちらの灯台脇から眺める景色が素晴らしい。
崎津教会と漁村遠景。
ああ、これを見るためにはるばるやって来たと言っても過言ではない。
ゴシック様式の美しい教会と、どこか懐かしい漁村風景と、背後の山々が見事に調和している。
日本全国ここだけの景色だ。
10分くらい眺めていただろうか。
誰もこない。穴場というかそもそも人がいなさそうな雰囲気。
確かに世界遺産に登録されたとはいえ、こんな時間まで残っている観光客もそういないはず。
海沿いに走ってその漁村の中まで入っていき、教会を目の当たりにする。
激しいキリシタン弾圧の歴史の上に建てられたこちらの教会、その祭壇の場所はもともと踏み絵が行われていた場所とも言われている。
1600年代の禁教開始から240年、潜伏キリシタンとして活動し続けるというのは・・・・私は無宗教だけど、畏怖の念を抱かざるをえない。
現役バリバリの教会で今でもミサが行われている。
私もお祈りの作法に則って、サイクルジャージ姿ではあるが靴を脱いで教会の中に入ってお祈りを捧げて来た。
自宅から遠く離れたこの土地の誰もいない教会内で一人祈りを捧げるというのもなんとも奇妙な感覚だ。アーメン。
さて、あとは苓北町まで北上してお宿にたどり着きさえすれば今日は無事に終わる。
時刻は17時。あと30kmといったところだろうか。
いつもよりも少しかつかつなスケジュール。全部、暑さのせいだ。
とは言え補給もせずに行くわけにもいかない。
目についたお土産さんの前に「杉羊羹」という看板が見えた。
なんだろう、気になる。
店内にお邪魔して見渡したけれどそれらしいものは見当たらない。
ご主人に声をかけて見る。
私「この・・・杉羊羹?っていま食べられますか?」
ご主人「ああ、、、今日はもうないよ」
私「えっ」
ご主人「昨日はこの時間でもあったんだけどねえ・・・」
聞くところによると杉羊羹は熊本の天草の中でもここ崎津界隈でしか食べられない品らしく、なにせ添加物を一切使わないものだから保存が効かないらしい。
その日に必要な分だけ作られるから、売れ行き次第ではなくなる日もあるのだとか。
そんなことを聞くと余計に食べたくなってしまったけれど、こればっかりは仕方ない(゚´ω`゚)゚。
せっかくだし少しゆっくりさせてもらった。
崎津界隈の土地のこと、天草は昔(50年ほど前)までは橋がかかってなくて熊本まで出るのは日帰りじゃ無理だったこと、だから橋ができたのは本当に有難いということ、最近はバイパスも通って観光客が増えたこと、家族のこと、土地の食べ物のこと、自転車旅のこと・・・・
私は椅子に座って、ご主人は机に腰掛けて煙草を吸いながら、夕暮れの漁村風景を眺める。
リュックのポケットにつめた石ころみたいな何でもない会話をしているだけなんだけれど、この日一番の思い出がこの時間になった。
その土地のことをよく知っている人と話す機会というのは、何よりも貴重だと思う。
Google検索なんかでは絶対に知りえない情報やリアルな体験こそ、自転車旅をしていて価値のあるものだと感じる。
さて、時間も時間だったのでお暇することに。
帰りはあっさりと、「気をつけてな」という一言で十分だった。満たされた。
崎津の町が、一生の思い出のうちの一つにノミネートされた。
ここから先のサンセットラインは天草が誇る絶景道の一つ。
左手に広がるのはただひたすらの水平線。
まあ海岸線沿いの道あるあるでアップダウンはそこそこ厳しいやつ'`,、('∀`) '`,、
1日たっぷり炎天下で体力を消耗していたから、余計に厳しく感じた。
思わず途中の神社で小休憩。
小さな滝があって大層、雰囲気のある境内だったけれど、全然有名でもなさそうだ。
鳥居ごしに陽が沈むのを眺める。
19時ごろには無事に苓北町の民宿に到着!!
いや〜〜〜疲れた。頑張ったよ私!
到着即お風呂をいただく。
生き返る。たまらない。生きててよかった・・・・・(゚´ω`゚)゚
お風呂から上がると晩御飯が用意されていた。
そういえばこの日は補給食を一切持たずに走っていたものだから、カロリーが足りていなかったと思う。
この世は不確かなことばかりだけれど、ロングライドした後のご飯の美味しさは間違いない。
ご馳走様でした。
さて、20時。
腹ごなしに民宿の目の前にある海岸線沿いを散歩してみる。
20時でこの明るさとは・・・・
さすがはるか西の地。
何よりも夕焼けが綺麗すぎた。
近くのベンチに腰掛けてただひたすらあたりが真っ暗になるまでこの景色を堪能した。
部屋に戻って程なく就寝。
ああ、熊本に着いたのが何日も前のことのように思えるような長い長い一日が終わった。
- 関連記事
-
-
【天草島原ツーリング】灼熱の島を繋ぐ旅【熊本〜三角〜天草】 2018/07/19
-
【天草島原ツーリング】海とそうめんとヒルクライム【苓北〜島原】 2018/08/01
-