【高知~四国カルスト】死に物狂いで坂を登るだけの一日【自転車キャンプツーリング】
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朝起きたときのリプライで目に留まったところに行こうと決めていた。
朝、5時。
リプライ欄を覗いてみる。
目に飛び込んできたのは「四国カルスト」。
では、いざ。
今回はテント泊ができるキャンプツーリング仕様で出発しました。
相当な獲得標高になることが予想されたから、なるべく軽装になるようにバイクパッキングスタイルで。
これが今思うと大正解。これがキャリアスタイルだとどうしても重くなるしそもそもバイクが違ってきます。GT GRADEでも走れるけれど、きっと体力の消耗が比較にならない。軽量快適なロードバイクでもキャンプツーリングができるようになったというのが、バイクパッキングのもっとも大きなメリットの一つだと実感します。
新幹線で岡山駅まで行き、そこから在来線特急「南風」で高知駅まで。
乗り換え一回で行けると思えば、高山や松本に行くのと同じような感覚。
海を渡るから遠く感じるけれど、実際はそうでもない。
9時半ごろには高知駅に到着。輪行解除をして10時には駅を出発することができました。
天気予報では曇りのち晴れ。
つまり目的地であるところの四国カルストおよびその手前、中津明神山に着くころにはいい感じの晴れ間が広がっている予想!
ふふふ、完璧な計画だとこの時は思っていました。
どうして、ああなった。あぁあ。
もう高知自体は何度も来ているので、ろくに観光もせずにそのまま西へ西へひた走ります。
事前にルートを引けなかったので、今回は電車内で地図を頭に叩き込みました。
路面電車が特徴の一つである高知県。
てっきり市内だけかと思ったら結構遠くまで線路が伸びていることに驚いた。
なるほど、街に出るのに路面電車が活用されているわけです。
道路に沿って線路が延びているのだけれど、車道の真ん中ではなく、一番右側を走っている。
そのせいか商業施設に入る為には踏切を探さないといけない。
さて、四国を走るときの鉄則が一つあります。
「いつまでも あると思うな そのコンビニ」
いや、まあ、私が勝手に言っているんですけど、経験則でいうと、間違いないと思います。
みんな信じて!
油断しないで!
としか言えない。
山間部に少しでも侵入しようものならそこから先は何もないと思った方がベターです。
補給、早めに。絶対に。
過去の経験則でいうと、愛媛県側、東予港から山を越えて高知に至ったことがあるのですが、東予港降りて10分くらいの場所にあったコンビニがその日最後の補給ポイントだと後になって分かりました。
結局その時はハンガーノックになりながら標高1.500mまで登って(めちゃくちゃ辛かった)展望台近くにいたご夫婦におにぎりをいただいて何とか乗り切った過去があります。
やれやれ。
というわけでこの日も早々に補給を完了。
明日までの補給食を買い込みました。
今回は自炊道具も持参していたので、インスタンス食品を使えるというのは大きい。
個人的に衝撃だったのが、このTSUTAYA返却ボックス。
だってここまで数十キロ、TSUTAYAなんてなかった。
これが次元転送装置・・・・・。
オムライス街道。
という名前のついた道路らしく、走っていると色んなお店でオムライスののぼりが見受けられます。
オムライス好きにとっての理想郷・・・
食べるしかない・・・・
ということで道の駅っぽいところで、いただくことに。
トマト尽くしな雰囲気のあるこの道の駅。
車で来ていたらお土産たくさん買い込んでしまう系の道の駅。たまりません。
四万十グリーン。水面に映る新緑がたまらなく、美しい。
うだるような暑さの中、ひいひい走っていると第一目標である中津明神山が見えてきました。
うん、遠目に見ても分かる斜度のきつさ。
標高の高さ。
心、踊る!
けれど実際に登り口に張り付いたのはそれから1時間後。
見えてからが長いのです。
ここらの土地は急坂に張り付くような村が多くって例えばこんな感じ。
最初は目の錯覚かと。
湾曲レンズを使っているわけではないです。
Lレンズなので収差湾曲は少ない。
中津明神山ヒルクライム。
登ってまたここに帰ってくるピストンクライムだったので、荷物を全部置いていくことに。
登山とかでもよくやる手法で、アタックするときだけ身軽になることができるのでおすすめです。
荷物を置く場所はまあその時々で、植込みの中だったり、バス停の裏だったり。
イケそうなら買い物をしたお店の人に頼んだり。
いくらでもやりようはあるのです。
数字だけを見ると結構ハードな登り。
標高差は1,300m
距離差はおおよそ15km
平均斜度は8.5%
最大斜度は25%
うーん、強敵。
乗鞍とか渋峠の登りといい勝負というわけ。
初モノだったので、楽しみである。
とはいっても先は長い。
単純計算で7.5kmで650mアップ。
今回の行程と荷物の量を考えると、平均時速は7~8km/hがいいところだから、2時間程度のヒルクライム。
途中、休憩したり写真撮ったりしていると2時間半くらいはかかるだろうという予測で登り始めました。
気温は上昇。
すぐに汗ばんでくる。
ペースを上げるとまずいと判断。
ゆっくりペース、淡々と登ること決定。
道幅は狭く、基本的には車一台分。
でも、交通量は少ないから問題ない。
ガードレールのすぐ向こう側には小さな川が流れていて、その綺麗さにぞっとする。
大阪近郊にあるような行儀のよい川じゃなくって、大きな岩や石がごろごろしている。
落差が大きい所では滝のように水が落ちている。
体感気温を下げてくれるようだ。
自販機は一切ないけれど、これだけ水があれば夏場でもなんとかなるだろう。
中間地点にある吾川スカイパーク手前の坂が一番厳しくって思わず蛇行してしまう。
GARMINの斜度計は25%を示していた。
くっ。
しかも距離が長い。
一息で登れるような距離じゃない。ずっとずっと続いているような感覚。
一気にペースダウン、歩くのとほぼ変わらない。
登りも大概だけれど、ここを下ると思うと少し憂鬱になる。
吾川スカイパークより先のヒルクライムは景色が一転して、完璧な林の中。
ガードレールもなく、道幅も狭い。
自分の周り全部が高い木々で、そういうところを自転車で登っていると、スッと落ち着いた気分になるのは私だけだろうか。
斜度は相変わらず7%を切ることはない。これが最後まで続くようだ。
やれやれ。
しかも路面が最高に悪い。
さっきの急坂もだけれど、ここの下りは相当スリッピーだと分かる。
道路の真ん中は砂利が溜まっている。
轍を走るにも、ところどころでこぶし大の穴ぼこが空いている。
ダウンヒル、なんて代物はとてもじゃないけれどできなさそうだ。
心肺も筋力も限界が近づいてきたころ、
視界が広がってきた。
林を抜けたようで、ここからは山の稜線沿いを登る九十九折。
いよいよクライマックスか。
大きく深呼吸をして、息を整える。
いったいどんな景色が!
なんてこった。
やれやれ。
絶望。
何にも見えない。
急にガスが広がってきて、最終的には視界5mあるかないか。
落胆した。
2時間半と体力を投資して登ってきたのに待っていたのはただの真っ白な世界。
しかもあろうことかこのままダウンヒルするのもためらわれるレベルの視界の悪さ。
こんなところで動けなくなるのはまずい。非常にまずい。
と、立ち往生しているとちょうど軽トラックがやってきた。どうやら頂上設備のメンテナンスをしていたらしく、今から降りるということ。
ダメ元で頼んでみると、なんと乗せてもらえることに。助かった。
というわけで視界が晴れるところまでは自転車ごと乗せてもらいました。感謝。
そこから先はダウンヒル。
予想通り思わずグラベルロードか何ならHTバイクが欲しくなるような下りをこなす。
九十九折り、斜度20%越え、路肩なし、崖下落下のスリルを味わいつつ。
距離も標高も相当あったようで、頂上から登り口まで30分もかかった。
フルクラムレーシングゼロカーボンでの下りだったから、ブレーキングにはかなり気を使ったけれど、こういう時には体重の軽さを有難く思うのです。
さて、時刻は16時。
ここから四国カルストまでは距離にして40km弱。
そして標高差は1,300m。
また登るのかというちょっとした絶望感を味わいつつ、選択に迫られていました。
近くのキャンプ場で済ませるか、このまま予定通り四国カルストまで駆け上がるか。
前者の方が体力的にも時間的にも余裕があることは明らかです。
ただし後者を選びました。
理由はただひとつ「早朝の四国カルストをこの目で見たい!」
行くしかありません。
命を燃やすヒルクライムのスタート。
今思うと無茶だ。どう考えても頂上に着く頃には真っ暗。
先ほどの数字から推測するに単純計算で2時間半はかかる。
空荷ならまだしも、キャンプツーリング仕様。仕方ない。
軽量なバイクパッキングスタイルだからまだマシな方。
徐々に暗くなっていく空を眺めながら、淡々とペダルを漕ぐ。漕ぐ。漕ぐ。
もうこんな時間のこんなところに誰もいない。
車が行き交うこともなく、誰ともすれ違うこともなく、孤独で過酷な2時間半。
途中、偶然にして唯一の個人商店で補給食を買い込む。
これは本当にラッキーだった。正直、少し赤字だったので。
お店の人としばし談笑。
これから四国カルストまで、と話すと、ずいぶんと驚かれていた。
冷静に考えたらそりゃそうか・・・・となるけれど、自分としてはそれしか道がないので、当然のことのように思えてしまう。
自転車乗りの異常性は確かにあると実感。
というか、ね、行くしかない。
ハードな登りだけれど、休むわけには行かない。
山の稜線が徐々に黒ずんでいく。幸いにしてもう5月だから、19時くらいまではぎりぎり明るいのが救い。
もう一月はやかったら真っ暗闇の中でのヒルクライムだったと思う
一体何でわざわざこんな過酷な環境に身を置いているのか何度も自問した。
気の利いた答えは出てこなかった。
ただ無心で軋む身体を無理やり動かしてペダルを回し続ける。
頂上に着くころには疲労困憊、満身創痍。
「キャンプ場まであと3km」の看板が果たしてなく遠く感じた。
こんな苦痛がまだ20分も続くのか・・・・と。
頭の中で自動計算するのをやめてしまいたい。
考えるのをやめろ!!!
山頂付近は霧がすごくって視界が10mあるかないか。
改めてこんな場所にこんな時間に来てしまったことを後悔した。
体力も限界で霧で身体が濡れるような状況でしかも風が強い。気温が下がってる。
温かいシャワーを浴びてベッドに転がり込みたい気分だったけれど、現実は今からテントを張る場所を探して設営をしないといけない。
広い広いカルスト台地の中のテント場を見つけるのが大変だった。
目を凝らしてなんとか発見。バイク乗りが先に着いていたようで、テントが3張。
このグループがいなかったら私一人だったようだ。
よかった、誰かがいて。こう追い詰められている状況だと、誰かがいるだけで、精神的に楽になる。
ものすごい風が吹いていたので風上を確認して、炊事場の陰にテント設営をした。
知っている人は知っているけれど、風が強い時のテント設営は本当に大変。
しかも見る見るうちにあたりは暗くなってきて、プレッシャーもすごい。焦る。
何とかテントを設営して、濡れたらまずい装備を全部テント内に押し込んでから自分も入る。
ここでようやく一息つけた。
カップラーメンを作って食べる。味わう余裕もなく、ただただ掻き込んだ。
生き返った気分だった。
これは明日大変だぞ・・・・と思いせめてもの予防で10分ほどかけて丁寧にストレッチをする。
寝巻に着替えてから、NANGAのシュラフに潜り込む。
とても・・・寒い。気温がぐんぐん下がっているのがわかる。
テントから顔を出してみると、計り知れないくらい巨大な闇の中にポツンと放り出されたような不安が襲ってきた。
風が目視できるんじゃないかっていうくらい、ビュンビュン吹いていた。
家を出た時は星空が見られるかも、なんて思っていたけれど、この時は当然そんな発想すらない。
見上げると黒のような黄色のようなグレーのような、表現し難い色の闇が広がっていた。
せめて冬対応のシュラフをもってきて良かったと心底思った。
テント内に戻る。
風がテントを殴っている。
けれど疲れた心身にはそんなことも気にならない。
もういい・・・もう眠らせてくれ・・・・
などと思う暇もなく
刹那、深い深い眠りについた。
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