【瀬戸内ツーリング】呉 堪能【〜この世界の片隅に〜聖地巡礼】

神楽坂つむり

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呉と聞くと何を連想するだろう。
私が思い浮かべるのは「造船」。
かつての大日本帝国海軍の誉れ、世界最大級の戦艦「大和」が建造されたこの町に訪れるのは3度目となります。


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時刻は13時。昼下がりのよく晴れた平日特有の柔らかく穏やかな空気に包まれたまま町は、これまでの呉とはまた違った雰囲気を醸し出していました。


同じ土地、同じ町でも訪れるときの季節や時間、気温、風、さらにはその時の自分の心情、状況によっても感じるものが異なってきます。久しぶりの土地への再訪はいつも懐かしさと目新しさを兼ね揃えている。



さて、でも、最近は造船以外にも「聖地巡礼」という言葉を連想する人も増えているのではないでしょうか。かくいう私もその一人。
艦隊これくしょん、それもあるだろうけれど、この時の私は映画「この世界の片隅に」のことで頭がいっぱいだった。まだまだ上映館も少ないころ、テアトル梅田の小さいスクリーンで本作を観て以来、ずうっと舞台である広島、呉を訪れたいと思いっていました。


いや、渇望していた!


作品の良さについては私よりもっと考察っぽい考察をしている人がいるのでそちらをご覧いただければと思いますが、個人的な印象としては「あたたかい」「内面の強さ」「生活の尊さ」といったコトバが、エンドスクロールを眺めているときに浮かんできました。
おそらく、というか間違いなく時代考察から当時の建造物、人々の服装と言葉使いまで徹底して検証、取材をしたうえで、本作が作られています。故にオタク的な観点から本作を紐解いていくのも十分な娯楽になりそうですが、単純に主人公である「すずさん」を見ているだけでも胸にくるものがあります。ふだんは飄々としているけれど、実は内面に、それも普段は使わない引き出しの奥のような位置に強い意志をちゃんともっていて、終戦放送をラジオで聞いた直後のあの衝動、その強く生きようとする意志の強さにはぐっとくるものがありました。


個人的にはまな板と包丁をバイオリンに見立てているシーンが大好きです。


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で、話を戻すと町の描写の素晴らしさです。
これを観たからには実際に自分の目で町を見たい!と思うのが性というもの。
呉の町は作品抜きにしてもなんというかその独特の雰囲気ゆえに訪れたくなる町。
広島という主要都市からお世辞にも便利とは言えない海の方へと離れた立地にありながら、町としての活気がちゃんと残っている。背中と左右を周囲を九つの峰に囲まれて(呉の名前の由来)前方に迎えるは瀬戸内海。一見すると閉鎖的な雰囲気あるいは孤立している感が出そうなものだけれど、ここはそうじゃない。話す人はみんなフレンドリーだし明るい。土地によって人柄ってのは明らかに違うなと自転車旅をしていると実感する。


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地方のよくある制服店かな?と思ってよく見るとまさかの自衛隊御用達の制服店。

興味本位で入ってみると、ガチの制服がずらり。海兵さんの帽子から靴下まで揃っていて、びっくりした。一応、観光客向けのグッズもいくつかあったりして、私も記念にコースターとステンレスマグカップを購入。

お店の人と話しをしてみると、最近は観光で訪れる人も増えているのだとか。曰く「わざわざ遠くからこんなところまで来なくてもねえ」というコメント。呉の人はこういうスタンスの人が多い。いろんな話をしてくれる面白いお母さんで、自衛隊員のこもれ話や裏話も聞いてしまった。アブナイアブナイ。




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呉ならではの光景。こうしてみると潜水艦って大きいなあ・・・・・。



昼ごはんはフォロワーさんに教えてもらった中華そば屋の「モリス」というところでいただくことに。ちょっと珍しいくらい活気のある、けれどレトロな雰囲気の漂う商店街の一角にあった。

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これは・・・教えてもらってなかったら絶対に入らない・・・・。
こういう地元の人情報って本当にすごいんですよね。
自分で調べるだけじゃ到底たどり着けないところまで及んできます。
うーん、情報化社会、ありきたりな情報しか上に来ないんですよね。
こういうディープなところって、やっぱりディープなだけあって、そう簡単にはヒットしません。
だから毎回、フォロワー情報は役に立つのです。



ご飯を食べて外に出て自転車に乗ろうとしていると突然後ろから「もしかしてつむりさんですか?」と声をかけられてリアルにむせました。まさかです。こんなタイミングって。



どうやら私の様子を見てわざわざ来てくださったようです。なんということでしょう。旅の出会いは嬉しいものです。一期一会です。呉のことを色々と教えてくれました。せっかくだから写真を撮りましょう!ということでちょうどモリスを出て隣の隣の隣の建物あたりにあるショッピングセンター前に来たのですがなんとそこで偶然知ってしまいました私。

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このショッピングセンターの上には呉唯一の映画館があってなんとそこで「この世界の片隅に」が上映されている。
この瞬間、全てが決まりました。次の上映時間は1450分です。この後、停泊中の自衛艦を海の上から眺めることができる「艦船クルーズ」というのを体験する予定だった私。それが14時から30分。つまり今から艦船クルーズした後、急いでここまで戻れば「この世界の片隅に」を観ることができる!


ブラボー。思わず叫んでしまいました。


いや、今まで色んなところで考えてはいたんですよ。聖地でその作品を観るという行為。この上ないですよね。ただ中々そういうわけには行きませんでした。ARIAなんてイタリアで上映されている訳ないですからね。今回はロングラン上映のおかげでこの夢が叶ったのです。



艦艇クルーズは、控えめに言って満足度1200%でした。


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この遠近感が狂う感じがたまりません。

船もそうだけれど周りの重機のサイズが笑えるくらい大きい。


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充電中。



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任務の為、多くの護衛艦が出払っていたのが残念でしたが、その代わり最新鋭の潜水艦も見られましたし、大和を建造した工場もばっちり見えました。ただ私が訪れた1週間後に呉に就任した「かが」が入港したのを知って少しショック。しかもそのタイミングで護衛艦もたくさん帰ってきたということで・・・・・いつか、リベンジ!


ともあれ、そこからダッシュで映画館に向かおうと自転車置き場に戻ると、またしてもいただきました。「もしかしてつむりさんですか?」 こわい、サイクリング部こわい。わざわざ終わるのを待っていてくれたもよう。なんという!

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そしてまた呉のことをたくさん教えてくれました。うーん、地元愛があるんだなあ。例のメロンパンは今度来たときに必ず食べてみたいと思います。



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さて、無事に「この世界の片隅に」を堪能した私。呉が舞台の作品を、呉で観る。
はい、上映後、映画館を出て呉の町を観たときには思わず目頭が熱くなりました。いや、ほんと。
思わずすずさんを探してしまいます。こんなとこにいるはずもないのに(山崎まさよし風)


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あの作中に描かれた焼野原がここまで復興した、もうそれだけで涙が出そうになります。でもきっと、私と同じように観ていた、ほとんど地元の人たち。彼らの心情はもっと揺さぶられたことでしょう。それだけのリアルさ、説得力が本作にはあると確信します。



お腹が空いたので、地元の人おすすめの居酒屋「利根」へ訪れることに。名前からお察し、ここでは海軍カレーのひとつ、護衛艦「利根」のカレーレシピを使ったキーマカレーをいただくことができるのです!素晴らしい。

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このお店、大正解でした。大当たりです。味はまあ間違いなく美味しいのでそれだけでも価値があるのですが、お店の雰囲気というかお店の人が素敵すぎる。
艦隊これくしょん的な聖地のひとつにも挙げられそうなお店で、店内のカウンター付近には同人イベントのパンフレットがあったり、間宮さんの人形があったり、ちゃんとした居酒屋なのに、そういうオタク文化とか地域のネタとかが混在しています。
旧「利根」そして現在の「利根」の艦長が訪れることもあるのだとか。すごい。


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宣伝しといてよ!ということなので紹介。

みなさん!呉にお越しの際は是非居酒屋「利根」さんへ。

本当に良いところですよ。気さくなお姉さん方が待っています。

楽しい時間と腹ごしらえをした後は、再び呉散策です。



気になっていたスポット、聖地巡礼ポイントへ移動するものの、全然見つけられず。

何せ情報がないまま来てしまったものだ。

まあこういう散策も楽しい。その土地の細かいところまでじっくりと観察することができるのも聖地巡礼のいいところ。

うろうろすること20分・・・ようやく見つけた!

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作中ですずさんが何度もここの前を通っていたので、どうしても見てみたかった。
三ッ蔵。旧澤原家住宅。なんと江戸時代後期から残る建物で、近くでよーく見るとその表面に歴史が現れているのがよくわかる。


「この世界の片隅に」堪能しました私!

本当は灰ヶ峰も登っておきたかったけれど、満足指数がカンストしたのでこれにて撤退を決めることに。



神戸三宮から深夜便フェリーで高松に渡り、
ドッタンバッタン大騒ぎなうどんライドをして、

パンクしたり自転車屋をめぐって修理をしたり、

特急輪行して今治の街を散策して、

フェリーで島に渡ってとびしま海道を堪能して、

呉で艦艇クルーズをしたり映画を見たり聖地巡礼をしたり。


いろんな意味でお腹いっぱいになるツーリングだった。

一度訪れた場所、初めての場所、どんな場所だっていい。

季節が変われば景色が変わる。時間が違えば印象も変わる。

とにかく出発さえすれば、あとは成るように成る、動くように動く。

そういうふうにできているから、また旅立ちたくなる。


さて、次は・・・・。


終わり。




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