「うまく・・・・いくだろうか・・・・」
期待と不安が入り混じったこの感じ、嫌いじゃない。
飛行機輪行の詳細については前回の記事を参照していただければ幸い。
搭乗手続き、荷物預け、保安検査を済ませて、指定されたターミナルへ向かう。
こういう手順さえドキドキしちゃう。
もう飛行機は何度も乗っているはずなのに。
伊丹空港〜隠岐空港を結ぶ飛行機は小型機の
ボンバルディア DHC-8、「ダッシュ8」

すごく・・・小さいです
当然タラップは使わずに、滑走路を歩いて、階段を上って乗り込むタイプの飛行機。
あれだ、ドーハ空港からマルコポーロ空港の時も同じスタイルだったけれど
ここまで小さくなかったはず。
座ったのは一番前の窓際。
非常出口が設けられている箇所だ。
こういうとこに座るのは初めてで知らなかったのだけれど
ここに座る人は、非常時には乗客の脱出を手伝う義務があるのだそうだ。
添乗員さん「非常の際はご協力お願いしますね(にこっ)」
私「任せてください!(にこっ)(なんとかなるやろ)」
そして離陸。
大阪の街が一気に小さくなっていく。
そして気づいたら神戸を超えている。
はええええ!
鳥取砂丘だ
本当に気づいたら隠岐島に着いていた感じ。
たったの50分。
文明の利器はすごい。
受けられる恩恵は数知れないけれど、時間を有効活用できるようになるというのが、最大のプライオリティであることは間違いない。
無事に預けていた自転車を受け取って、ターミナルを出たところで組み立てる。
とても小さい空港で、どちらかというと駅って感じだ。
風はやや冷たい。
大阪に吹くそれとは明らかに違う。
鼻の奥にかすかに潮の香りがツンと通っていく。
海が近いんだ。
と、いうより滑走路の向こうは海だし、この道路を下った先も登った後も海だろう。
小さな小さな島なのだ。
ただし日差しはそれなりに暑さを感じさせるものだ。
天を見上げると雲ひとつない青空が広がっていた。
それを嬉しく思う。
きっと、走り出したら暑い。
半袖一枚に着替えてから走ることにする。
今回はサイクルウエアを一切着込んでいない。
ハーフパンツにTシャツ、あるいはシャツ。
そして寒い時用のパーカー。以上だ。
緩いポタリングやキャンプツーリングではサイクルウエアを着ないという信条があるから、私服で臨むようにしている。
この日の予定はこれといって決めていなかったけれど、飛行機の中で調べて以下のように決定。
・立木キャンプ場に行ってキャンプ用品を降ろす
・軽くなった状態で島を半周する
・西郷あたりでご当地晩御飯を食べる
・寝る
まずは西郷港を経由して、立木キャンプ場へ向かうことに。
知らない道だけれど、小さい島だ。
大体の方向感覚さえ間違えなければ、迷うこともない。
何せ大通りという概念もない数少ない道しかない。
少し走るだけで島の情景。
テンションアップ。
「ああ、、、来てよかった・・・・!」
西郷港からキャンプ場までは5km程度ということで、街とキャンプ場のアクセスはそこそこ良い。
「これなら晩御飯も安心だろう・・・。」
立木キャンプ場は人里から隔離されたヨットハーバーを臨む閑静なキャンプ場だった。
と言ってもヨットは一艘も停まっておらず、ただただ静かな入り江が広がるのみ。
緑の芝と海の青のコントラストがたまんない。
さて、ここで要らない荷物をパージして、軽量化した良い状態で走り出すぞい。
そうはいっても時刻は14時半。
普段のツーリングだと100kmを突破してそろそろ寝床探しを意識し始めるくらいの時間だ。
「北端まで島の東沿岸周りでアップダウン込みの30km、帰りは内陸側の一直線で20km・・・いける・・・!」
こういう時の時間計算は時と場合によるけれど、今回みたいに完全に初めての場所で観光しながら写真撮りながらの場合は、[av18km/h] 計算でいけばおkと言うのが経験則。
西郷港には18時頃には帰って来る計算で出発!
走りはじめてものの数分で隠岐島の懐の深さを感じた。
いや、懐というか、その自然が感じさせる時の流れを。
このような岩壁、絶壁が、どんどん出てくる。
「す、すごい・・・」と思わず口に出てしまう。
何もポップアップメニューから岩壁をドラッグしてオブジェクト設置したわけじゃない。
火山活動などで隆起した岩や、地上で言う所の山のてっぺん、そういったものが
日本海の風や波、日光にさらされ続けて「風化」した結果の情景なのだ。
とんでもない時間の流れを感じる。
自然を満喫する醍醐味はやはりここにあると思う。
五感でもない、二次元でも三次元でもない、「時間」という概念の大きさに感動する。
それにしても火山活動て言葉で言うとたった4文字だけれど、本当、ものすごいエネルギーだなって実感する。
文字どおり、地球の形が変わっていく。
数千年後にはこの景色も変わり果ててしまうんだろうか。その時の旅人も同じような感傷に浸るのだろうか・・・。
道はくねくねと曲がりながらアップダウンを繰り返す。
上下左右に景色が目まぐるしく変わる。
飽きることがない。
距離でいうと大したことはないけれど、詰まっている。
特に生えている植物の種類が本州のそれとは違っているように思える。
緯度や経度、環境、人との距離、そういった色んな要素が複雑に絡み合って決まる自然の景観。
そうだ、どこかに似ていると思ったら、屋久島だ。
人里離れた手つかずの自然、それがここ隠岐島にも残されているような気がした。
中村のあたりだけは平地に変わって、田舎の長閑な田園風景が広がる。
閑話休題。
出発から、1時間半ほど。
最後はググッと登り基調。
斜度10%近い坂を200mくらい一気に駆け上がると、白島崎展望台の入り口だ。
ここからさらに登る。
急ぐ旅でもないし、心持ちは余裕がある。
そういう時の登りというのは、全然苦じゃないし、むしろ楽しさしかない。
到着。サドルバッグないから楽チン。
展望台からの景色はまさにご褒美。
風化してハゲてしまった松の木のせいか、どこか最果て感がみなぎっている。
その場にいた地元のおじいちゃんと東京から観光に来たというおっちゃん集団としばし談笑。
こんな場所に自転車乗りがいること自体がかなり珍しいらしく、定番の質問を一通り受けてしまった。
おじいちゃん、だいぶ足腰が怪しいけれど、くしゃっとした笑顔の優しいお方で、写真を撮ってくれた。
スマホを持ったことがないらしく最初は裏表逆に持っていて私から見たら画面いっぱいにおじいちゃんの鼻のアップが写っていたのには申し訳ないけれど笑ってしまったらおじいちゃんも笑ってた。
政治の力を感じる。
時刻は17時。
あとは西郷港まで一直線に帰るのみ。
最初はまた登ったりするけれど、基本的には下り基調。
道も綺麗。
飛ばす。
結局西郷の街まで45分で帰ってこれた。内陸は随分走りやすい。
上下左右の道じゃない。単調。
その分景色は普通。バイパスと思えばいい。
そして晩御飯!
かねてより隠岐島の食事事情は調べていて、ご当地グルメも幾つかあるのは知っていたけれど、
どうしても島に来たのだから海鮮物をいただきたかった私。
で、知り合いにつてで教えてもらったお寿司屋さんにお邪魔することに。
回らないお寿司屋さんだけれど、店内の雰囲気は堅苦しくなく、席に着くなり大将と話がはずむ。
どうやら大阪で修行をされていた経験があるらしく、大阪トークで盛り上がる。
最初は私だけだったけれど、30分もすれば地元のお客さんがどんどん集まってきた。
皆、顔見知りなようだ。
話題も漁の話や、「出稼ぎ」の話だったり、島特有だなあと地味に感動してしまった。
やっぱり私みたいなよそ者はすぐに分かるようで、この辺りも島ならではだなあと思う、ご夫婦に話しかけられる。
自転車で回っていると伝えると、興味深そうに色々聞いてくる。
話題には事欠かない自信があるので、こういったときは多少サービス精神を込めて、話をさせてもらう。
あ、料理は最高でした。
私「隠岐島が初めてな僕に大将オススメコースでお願いします」
大将「あいよ!」
隠岐島の海の幸、これでもかというくらい食べました。このほかにも串カツや茶碗蒸しなどなど・・・・。
特に貝類は最高に美味しかったです。
暗くなる前にテント設営をしたかったので、まっすぐ家、もとい立木キャンプ場へ。
19時。普段の大阪ならば、帰宅ラッシュの時間だけれど、この島にラッシュの概念なんてないのだろう。島全体がとても静かだ。
ゆったりとした時間の中を走る。
そういえば、ご飯や飲み物を何も買っていないことに気づいて一瞬慌てたけれど、首尾よくちっちゃな個人商店があったので、おやつと飲み物、朝ごはんを買い込む。
コンビニエンスストアなんて代物はない。
食品食品食品食品食品食品食品
キャンプ場についてサクッと設営。
慣れてしまったもので、10分もかからない。
地面が湿っていたので小屋先に移動。
あとはこの静かな湾で夜を待つのみ。
ちなみにここ、圏外だったので、本当に何もすることがない。
1時間くらい海を眺めながらボーとして、歯を磨いて、Kindleで本を読んで、トイレをして、星空を眺
めて、多分21時くらいには寝た。
テントの布越しに聴こえるのは、波がかすかに揺れる音と、風の音、そして圧倒的な虫の声。
隠岐島自転車キャンプツーリング。
いい、初日だった。
おやすみなさい。
続く。
走行距離 62km
獲得標高 1,251m
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