【登山第7回】ちょっと燕岳登ってきた その2【長野県北アルプス】
写真, 機材紹介, アウトドア, 中部, 登山,
燕山荘(2713m)から燕岳山頂(2763m)までは、おおよそ4~60分といったところ。
山荘を出ると、もう頂上が見えてる!
そしてこれから歩く道もはっきりと。うーん、すぐ近くのようにも見えるし、ずっと遠くにあるようにも見える。スケールが大きすぎて、距離感をうまくつかめない。
軽くストレッチと、ゆっくりと深呼吸。
気合い!入れて!いきます!


標高差は50mくらいしかないはずなのに、ずいぶん高く見える。そびえ立ってる。
そしてざっと見た感じ、結構アップダウンがありそうだ。
最初は少し下り基調。
テンションは上がりっぱなし。

天まで抜けるような青空、風は弱く、陽射しは眩しい。
それでもすこし寒くって、ぴりっと張りつめた秋の空気が心地よい。
右を見ても、左を見ても、アルプスの連峰が対峙している。
うっすら雪化粧の山々は、信仰の対象となることも納得の荘厳さだ。

ケルン!
一歩一歩が少し重たい。
やっぱり登りで結構足を使ったせいかしら。
そして空気が薄いせいもあって、息が苦しい。けど、大丈夫、歩ける。
最初は石と砂と土が入り混じった地面が続く。
時折おっきめの石とかあって、稜線歩きと言えど、スニーカーじゃ厳しそう。
登山靴ってば偉大ね。
景色を見てるだけで、もうね、本当に気持ちが良い。
「今、わたしはアルプスにいる!!」
そんな実感がふつふつと湧いてくる。
そして意外だったのが、突然の岩場が結構出てくるということ。



クライミング、という程でもないけれど、手を使わないといけないところもあったりして、なかなかエッジが効いてる。
当然、森林限界なんてとっくに突破していて、日本とは思えない景色が続く。

メガネ岩!

土曜日だったけれど、そんなに人も多くない。
きっとこの燕岳には全部で100人くらいしかいないと思う。
夏のお盆頃には、これの10倍くらいの人がいるのだとか。
山に来てまで混雑に見舞われたくはないね。
ちなみに夏の富士山は平日で4~5000人、休日で6~7000人も登るのだとか。
世界遺産効果もあるけれど、さすが日本一やで・・・・。
雪が残ってるところもあり、そんなところでは照り返しがまぶしい。
帽子なんていらないよ、と思っていたけれど、こういうところをずっと歩くなら、あった方がいいのかも。
というか、一応持って来てた。
もうちょっと寒くなったら被ろうかしらね。
いよいよ山頂が近づいてきた。
ぐっと斜度が増して、真下に来るころには見上げるような道が。
両手両足を使って、ぐっと・・・山頂に・・・・

燕岳登頂!


うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
なんという眺望、達成感・・・・。
360度パノラマとはまさに。ぐるぐるまわりを見渡す。地球の燕岳に私はいる。
これは唯一無二だ!何物にも代えがたい経験だ。
狭い狭い山頂で写真撮影をこなす。
他の登山客に写真を頼まれたりしても、山頂が狭すぎて、後ろに下がりきれないくらい狭い。
頂上ということで、結構な高度感もそれなりにあって、高所恐怖症の人はへっぴり腰になるかも。
でも、そんなの気にならないくらいの眺望なのは間違いない。
本当に天気に恵まれて良かった。
山の天気は変わりやすいと言うけれど、これだけ青空が広がっていると、それも杞憂に終わると、確信できる。
振り返れば燕山荘から歩いてきた道がはっきりと見える。
こうしてみると結構距離あるんだなあと実感。そして高度差が結構ある。
50mぽっちかー、と思ってしまうけれど、よくよく考えたら15階建てマンションくらいの差がある。
距離感だけじゃなくって、高度感もよくわからないことに。
そしてここからさらに北へ。
目指すは北燕岳!(2750m)

夢にまで見たアルプス縦走である。
それにしても、だ。
アルプスって本当に気持ちが良い。
特にこの稜線歩きは、左右に広がる連峰を、同じ高さから眺めながら歩けるってのが、非日常的でとても楽しい。
燕岳からいったん30m程の斜面を下って、また細い道を往く。
迷うような道でもないし、危険個所もないけれど、きっとこれは条件が良いからだろう。
たとえばこれが暗くなってしまったり、霧に覆われてしまったり、ましてや雷雨になんかなったら十分遭難してしまいそう。
一応真っ直ぐ歩けるのだけれど、時折斜度が急な斜面が靴一足分横にあらわれたりして、万が一バランスを崩して転倒でもすれば、100mくらい滑落するリスクも常にある。
そういった意味で、やっぱり山は危険だと、感じずにはいられない。

こちらの方は山荘から燕岳よりも雪が多く残っていた。
人が少ないせいか、轍もあまりできていない。
試しに雪を踏んでみると、新雪というには硬すぎる。
きっと外気温が低くって、水分がすぐに凝固するからだろう。ふわふわの雪はおあずけかしらね。

岩場を抜けて、北燕岳の直下にきたけれど、突然10m弱のクライミングスポットが。
一瞬、ひるんでしまったけれど、ここまできて登らない訳にはいかない。
意を決して、岩のくぼみに手足をかける。
近付いてよくよく観察してみると、ちゃんと足場はある。慎重に行けば大丈夫だろう。
けど、あまり下は見ない方がいいかもしれない。
高度感がすさまじい。
最後は岩に身体をあずける感じで、よじ登る。
脳内でリポDのCM再生余裕でした。
こちら燕岳と違って広い!ゆとりがある!
またまたぐるりと360度見渡してみる。相変わらずの青空と、穂高連峰に、何度でも感動してしまう。
空気が薄いせいもあるけれど、心臓がどきどきしっぱなしだ。
しばらく記念撮影とか、他の登山客の写真撮影のお手伝いとかして、山頂を満喫する。

燕岳と対峙。
まだ、お昼過ぎ。時間はたっぷりある。
縦走!ということで、北燕岳よりも北も行けないことはなかったけれど、ちょっと見ただけでも明らかに難易度が上がりそうで、断念。


正規ルートなのかもよくわからないし、そもそも誰一人そこから先進んでない。
こと山においては疑わしきは安全牌をとったほうがいい。


そこそこ疲れも溜まってきたし、いったん山荘まで戻ることに。
振り返った景色もまた格別。

本来泊まる予定だった大天井までひたすら道が続いてるけれど、あそこまで4時間はかかるだろうなあ・・・常念岳も、槍ヶ岳もいつか登ってみたいものだ。

下ったり登ったりよじ登ったりを繰り返して山荘に戻ったのが14時半くらい。
まだまだ活動時間内だ。
ということで、燕岳とは反対方向の南側の稜線を散策することにした。

方向としては、大天井、常念岳方面。さらに先には槍ヶ岳、穂高方面。
あー、来年にもテント担いで大縦走してみたいなあ・・・・。

雷鳥だ!

大変可愛らしい。

こっちは全然人がいなくって、とても静かだ。
似てるけれど全然違う。岩場はあまりなくって、背の低い草木と砂が目立つ。

鳥の巣が近くにあるんだろうか、小鳥がたくさん飛んでいる。
左手は眼下に長野の街並みが、右手は穂高連峰。斜面が常に横にいる感じで、油断ならない。
どんどん暖かくなってきたせいもあって、とても活動しやすい。
ついつい、遠くまで行ってしまいそうになるけれど、片道3~40分くらいで切り上げ。
深入りは禁物だ。







折り返して山荘に戻ったのが15時半。

晩御飯まで時間があるということで、仮眠をとることに。
疲れが溜まっていたしね。
敷布団をしいて、寝袋を広げて、すやあ・・・・・。
16時半頃に目が覚める。
ずいぶん深く眠ってしまった。しばらくもぞもぞ。
何か大事なことを忘れている気がする。
なんだろう、と思いながら、30cm四方程の窓から外を見て気が付いた。
「夕焼けだ!!!!」
しまった、そういえば夕焼けを見るとかいうイベントをすっかり忘れていた!!
爆睡してる相方を起こして、服を着込んで急いで外に出ると

はい終わってましたーー!!
泣いた。ちくせう、失念していたんだぜ・・・。
登山客がどんどん山荘に帰って来る。いったいその目にどんな光景を焼き付けたんですかみなさん。
まあ、、、仕方ない。また今度見にこよう。朝焼けは絶対見るぞ!
で、時間的にはちょうど晩御飯。
チェックイン時に渡されたチケットを持って、食堂の入口に並ぶ。
16時50分になって、みんなで共同の食堂にIN。
山小屋だから当然、色んなテーブルにみんなで相席。この雰囲気も、また楽しい。
晩御飯はハンバーグとかサラダとか、白ごはんにお味噌汁!
みんなで手分けしてご飯をよそったり、お味噌汁を注いだり。
なんか合宿みたいで楽しいぞこれ。

そしていただきます。とても、とても、美味しい。
実は素泊まりにするのも考えてたけれど、これはご飯付きにしといて正解だった!
想像以上にちゃんとしたご飯だったし、一日歩いた後に自炊するのも中々大変な気もする。
仮に2日で5食分用意するとなると、それだけで結構な量になるし、それだと絶対初日のすきやきなんてできなかったし。
今後も積極的に山小屋うまく利用していこう。
ご飯を食べた後は、寝支度と、明日の準備をしてから、お待ちかねの天体観測をすることに。
ちなみに山小屋では翌朝の準備は前日の早いうちから済ませておくのがルールらしい。
寝てる人がいる横でがさがさ音を出すのはNGだものね。
靴を履いて、外に出るために扉を開けた瞬間、
「あ、これあかんやつや」
ってわかった。これ、寒すぎるやつや。
考えられる最大限あたたかい装備に着替えて再トライ。
うん、さっきよりはまし。それでもやっぱり寒いなあ・・・・。
山小屋以外には何一つ明かりが無いここは山の上だ。本当に暗い・・・
そして空を見上げれば、おそろしいくらいの星が敷き詰められていた。
しばらくぽかんとしていた。こんなに星を見たのは生まれて初めてかもしれない。
星座がはっきりと分かる。
プラネタリウムみたいだ、と思ったけれど、そもそもプラネタリウムが星空を模して作られてものなのだから、表現としては逆になるべきだ。
でも、作りものよりも、ずっと綺麗だ。

東に目をやると、眼下に広がる長野の街から、淡い光が浮かび上がってきてた。
間接照明の様にぽわっと光っている。
下界はすこし霧が出ているのだろうか。
安曇野市、松本市、長野市の場所がはっきりと分かる。
それぞれの間はペンキで塗りつぶしたような深い黒。
山荘から少し離れた地面に大の字で仰向けになって寝っころがってみた。
立ってるより少しあたたかいかも。
しばらく目を閉じてから目を開ける。

視界には星しかない。
結構な頻度で流れ星が見える。なんだろう、当然のように流れていく。
非日常なようだけれど、ここではこれが日常なんだろう。
そのまま10分くらい眺めていただろうか。
そろそろ寒さも限界と言うことで山荘に戻ることに。
これだけの装備なのにたった10分で凍えるなんて、おそろしいところだ・・・。
ふと周りに目をやると、何人かが同じように仰向けになっていた。なんだか、シュール。

山荘に戻って、歯を磨いて、服を着替えたら、もう就寝だ。
なんて健全なんだろう。8時にはもう寝ていたと思う。
てっきり山小屋らしく夜はみんなで語り合う、みたいなのがあるのかなーと思ってたから少し拍子抜け。
と言いつつ私自身、大阪からの移動と車中泊。そこからの登山と言うことで疲れていたのは事実。
深い深い眠りについた。
4時30分。
知らない天井だ。
しばらくぼーっと、現在の状況を認識するのに時間がかかる。いつものことだ。
ここは、そう、山小屋だ。燕岳に私はいる。
ぐっすり眠れたおかげで、頭がすっきりしてる。
寝る前のこめかみあたりの違和感もなくなっていた。この高度にもすっかり慣れたということだろうか。
周囲ではごそごそと音が聞こえる。みんな起き出したようだ。
9時前には寝ていたから、7~8時間睡眠はできたということだ。なんという健全っぷり。
さて、昨日の失敗を繰り返さないぞ私は。
ご来光を見る!
耐寒装備に着替えて、カメラを持って、外に出る。
おそろしく、寒い。実際の気温は分からなかったけれど、氷点下だろうな、と感じた。
風が吹くとまた寒い。

東の空を見ると、すこしだけ空が色づいていた。実際に日が昇るのは4~50分くらい先だろう。

それまで、じっくりと天体観測と、黒から青に染まっていく空を眺めていた。
他の登山客も続々と出てきた。
みんな、同じように東の空を眺めている。
最も気温が低い時間帯だ、みんな震えながら、今か今かと待ちわびる。
そして

ご来光。
まわりが一気に明るくなる。
山々が光を受けて輝き出し、反射した光が撹拌して、眼下の霧はライブ会場のスモークのように、せりあがってくる。
寒さに震えてたときと違い、みんなぱあっと雰囲気が明るくなって、太陽ってすげえ!って思った。

朝日を受けるテントがきれい。
こんな寒い中テント泊だなんて信じられない。でも、いつかやってみたい。

燕岳に目をやると、なんと頂上付近にちらほら人がいるのが見えた。
ご来光登山と言うやつか。すごい。



くまー

ご来光を楽しんだ後はお待ちかねの朝ごはん!
昨日いっぱい運動したせいか、身体がカロリー消費モードになってるのよね。
摂取したカロリーをエネルギーにどんどん変換するやつ。
だからお腹吹田シティ。寒いせいもあるか。

晩御飯と同じように、食堂でみんなでいただきます。
白ごはんうめえ。味噌汁あたたまる!
あたたかいご飯を食べられる有難味といったらない。
部屋に戻って、布団と寝袋を直して、出発。
ありがとう燕山荘!大変居心地の良い山小屋でした。
山小屋とは思えないくらい、快適だった。
時刻は7時。今から下山して10時には中房温泉口に着くだろうか。


うーん、せっかく来たんだから!
ということで再び北燕岳までアタックすることに。
行って帰るくらいの時間は十分あるはず。


昨日よりも空気が澄んでいる気がする。
朝の空気と言うやつだろうか。
高い高い秋の空、雲一つない。
登山客も全然いなくって、静かで、ゆっくりできて、リラックスできる。


同じ道なのに昨日とはまた違った感触だ。
そう、足が楽。
一度眠ってすっきりしたからかな。ずっとクリアな気分で登ることができた。

燕岳を通って、そのまま北燕岳まで。
さらにもうちょっと先までチャレンジ!ということで、山頂にザックを置いて、身一つでプチアタック。
なるほど、ザックも何も背負ってなかったら、いくらでも動ける気がした。
岩場もなんのその。バランス崩したり、ザックをぶつけるリスクがないから、ずっと楽だ。
やっぱり自転車と同じで、小型軽量ってのは、有利に働くものね。
山頂に戻って、時間があったから朝のコーヒーを楽しむことに。

コッヘルにペットボトルの水を注いで、クッカーで煮沸。気圧が低いから、沸点も低め。
穂高連峰に乾杯。

ああ、幸せ。
山荘に戻ったのが9時くらい。
ここから一気に高低差1.300mを下る。


これがなかなか脚に来ると言うか、前ふとももがパンパンになるというか
膝への負荷がすごいというか、正直登りよりも辛かった!

斜度が急なものだから、自然と身体が前のめりになってしまうのを必死に抑えながら、踏ん張りながらの下りだったものだから、つらくてつらくて。
それでも他の登山客と比べるとまあ平均くらいだったかしら。
速い人は軽いフットワークでひょいひょい降りていく。身軽だなー。何が違うんだろ。
ストック持ってる人はなかなか楽そうだった。
持ってなくても速い人もたくさんいたけど。

おおよそ2時間半かけて、無事に下山。
登山口に着いた時には相方と思わずハイタッチ。
まさか下山でこんなに達成感があるとは。
それにしてもつっかれたー!!
正直許されるならフルサスペンションのMTBで楽しく下りたかった()
でもつらい先にはご褒美がある。
そう、ここ燕岳登山口は中房温泉。温泉である。
というわけで、登山口横の温泉になだれこむ。立地が神。
ここが源泉かけ流しの大露天風呂で、もうね、めちゃくちゃ気持ち良いの。
「ああ“~~~」って呻らざるをえない。
露天風呂から眺めるはアルプスの山々と、抜けるような青い空。
木々は色づき、秋模様。
ここが極楽浄土か・・・。

お風呂上りは、売店でアイスを買って、外でいただく。
いやー、幸せ成分溢れ出てるわー。
車に戻って、服を着替えて、靴を履きかえて、帰路に。
来るときは真っ暗で気付かなかったけれど、安曇野から中房温泉までのこの道もなかなかどうして風光明媚。

渓谷になってて、景色がダイナミック。紅葉もきれいで、箕面みたい。

普通に猿もいるし、ほんと箕面みたい。
せっかくだから!ということで大王わさび農場に立ち寄ることに。

くまー
長野県と言ったら蕎麦、野沢菜、豆腐、わさび!
さわびの葉っぱの天ぷらと、蕎麦をいただく。

うまー。
ついでにわさびソフトクリームとかいうやつ。

これまたうまー。
大阪までは再び450kmのドライブ。
長野、岐阜、愛知、滋賀、京都と5県をまたいで大阪に到着したのが19時頃。
都会のビル群を見てもしばらく違和感しかなかった。
あのアルプスの景色を見た後では、全部作り物に見えてしまう。(100%作り物ですありがとうございました)
3日ぶりの布団はありがたさしかなかった。
計画から準備、実行まで時間がかかってしまったけれど、天気に恵まれて最高のアルプスデビューを果たすことができた。
こんな経験をしたら、夢中になる予感しかしない。
自転車を始めた時とおんなじだ。
なんとなく手探りで始めたけれど、気付いたらすっかり夢中になってしまって、気付いたら全国津々浦々走り回っていた。
知識も、経験も、道具も、どんどん積み重なっていく。
きっと登山もそんな楽しさを提供してくれるに違いない。
次は、どの山を登ろうか。
おわり。
写真,
機材紹介,
アウトドア,
中部,
登山,
山荘を出ると、もう頂上が見えてる!
そしてこれから歩く道もはっきりと。うーん、すぐ近くのようにも見えるし、ずっと遠くにあるようにも見える。スケールが大きすぎて、距離感をうまくつかめない。
軽くストレッチと、ゆっくりと深呼吸。
気合い!入れて!いきます!


標高差は50mくらいしかないはずなのに、ずいぶん高く見える。そびえ立ってる。
そしてざっと見た感じ、結構アップダウンがありそうだ。
最初は少し下り基調。
テンションは上がりっぱなし。

天まで抜けるような青空、風は弱く、陽射しは眩しい。
それでもすこし寒くって、ぴりっと張りつめた秋の空気が心地よい。
右を見ても、左を見ても、アルプスの連峰が対峙している。
うっすら雪化粧の山々は、信仰の対象となることも納得の荘厳さだ。

ケルン!
一歩一歩が少し重たい。
やっぱり登りで結構足を使ったせいかしら。
そして空気が薄いせいもあって、息が苦しい。けど、大丈夫、歩ける。
最初は石と砂と土が入り混じった地面が続く。
時折おっきめの石とかあって、稜線歩きと言えど、スニーカーじゃ厳しそう。
登山靴ってば偉大ね。
景色を見てるだけで、もうね、本当に気持ちが良い。
「今、わたしはアルプスにいる!!」
そんな実感がふつふつと湧いてくる。
そして意外だったのが、突然の岩場が結構出てくるということ。



クライミング、という程でもないけれど、手を使わないといけないところもあったりして、なかなかエッジが効いてる。
当然、森林限界なんてとっくに突破していて、日本とは思えない景色が続く。

メガネ岩!

土曜日だったけれど、そんなに人も多くない。
きっとこの燕岳には全部で100人くらいしかいないと思う。
夏のお盆頃には、これの10倍くらいの人がいるのだとか。
山に来てまで混雑に見舞われたくはないね。
ちなみに夏の富士山は平日で4~5000人、休日で6~7000人も登るのだとか。
世界遺産効果もあるけれど、さすが日本一やで・・・・。
雪が残ってるところもあり、そんなところでは照り返しがまぶしい。
帽子なんていらないよ、と思っていたけれど、こういうところをずっと歩くなら、あった方がいいのかも。
というか、一応持って来てた。
もうちょっと寒くなったら被ろうかしらね。
いよいよ山頂が近づいてきた。
ぐっと斜度が増して、真下に来るころには見上げるような道が。
両手両足を使って、ぐっと・・・山頂に・・・・

燕岳登頂!


うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
なんという眺望、達成感・・・・。
360度パノラマとはまさに。ぐるぐるまわりを見渡す。地球の燕岳に私はいる。
これは唯一無二だ!何物にも代えがたい経験だ。
狭い狭い山頂で写真撮影をこなす。
他の登山客に写真を頼まれたりしても、山頂が狭すぎて、後ろに下がりきれないくらい狭い。
頂上ということで、結構な高度感もそれなりにあって、高所恐怖症の人はへっぴり腰になるかも。
でも、そんなの気にならないくらいの眺望なのは間違いない。
本当に天気に恵まれて良かった。
山の天気は変わりやすいと言うけれど、これだけ青空が広がっていると、それも杞憂に終わると、確信できる。
振り返れば燕山荘から歩いてきた道がはっきりと見える。
こうしてみると結構距離あるんだなあと実感。そして高度差が結構ある。
50mぽっちかー、と思ってしまうけれど、よくよく考えたら15階建てマンションくらいの差がある。
距離感だけじゃなくって、高度感もよくわからないことに。
そしてここからさらに北へ。
目指すは北燕岳!(2750m)

夢にまで見たアルプス縦走である。
それにしても、だ。
アルプスって本当に気持ちが良い。
特にこの稜線歩きは、左右に広がる連峰を、同じ高さから眺めながら歩けるってのが、非日常的でとても楽しい。
燕岳からいったん30m程の斜面を下って、また細い道を往く。
迷うような道でもないし、危険個所もないけれど、きっとこれは条件が良いからだろう。
たとえばこれが暗くなってしまったり、霧に覆われてしまったり、ましてや雷雨になんかなったら十分遭難してしまいそう。
一応真っ直ぐ歩けるのだけれど、時折斜度が急な斜面が靴一足分横にあらわれたりして、万が一バランスを崩して転倒でもすれば、100mくらい滑落するリスクも常にある。
そういった意味で、やっぱり山は危険だと、感じずにはいられない。

こちらの方は山荘から燕岳よりも雪が多く残っていた。
人が少ないせいか、轍もあまりできていない。
試しに雪を踏んでみると、新雪というには硬すぎる。
きっと外気温が低くって、水分がすぐに凝固するからだろう。ふわふわの雪はおあずけかしらね。

岩場を抜けて、北燕岳の直下にきたけれど、突然10m弱のクライミングスポットが。
一瞬、ひるんでしまったけれど、ここまできて登らない訳にはいかない。
意を決して、岩のくぼみに手足をかける。
近付いてよくよく観察してみると、ちゃんと足場はある。慎重に行けば大丈夫だろう。
けど、あまり下は見ない方がいいかもしれない。
高度感がすさまじい。
最後は岩に身体をあずける感じで、よじ登る。
脳内でリポDのCM再生余裕でした。
こちら燕岳と違って広い!ゆとりがある!
またまたぐるりと360度見渡してみる。相変わらずの青空と、穂高連峰に、何度でも感動してしまう。
空気が薄いせいもあるけれど、心臓がどきどきしっぱなしだ。
しばらく記念撮影とか、他の登山客の写真撮影のお手伝いとかして、山頂を満喫する。

燕岳と対峙。
まだ、お昼過ぎ。時間はたっぷりある。
縦走!ということで、北燕岳よりも北も行けないことはなかったけれど、ちょっと見ただけでも明らかに難易度が上がりそうで、断念。


正規ルートなのかもよくわからないし、そもそも誰一人そこから先進んでない。
こと山においては疑わしきは安全牌をとったほうがいい。


そこそこ疲れも溜まってきたし、いったん山荘まで戻ることに。
振り返った景色もまた格別。

本来泊まる予定だった大天井までひたすら道が続いてるけれど、あそこまで4時間はかかるだろうなあ・・・常念岳も、槍ヶ岳もいつか登ってみたいものだ。

下ったり登ったりよじ登ったりを繰り返して山荘に戻ったのが14時半くらい。
まだまだ活動時間内だ。
ということで、燕岳とは反対方向の南側の稜線を散策することにした。

方向としては、大天井、常念岳方面。さらに先には槍ヶ岳、穂高方面。
あー、来年にもテント担いで大縦走してみたいなあ・・・・。

雷鳥だ!

大変可愛らしい。

こっちは全然人がいなくって、とても静かだ。
似てるけれど全然違う。岩場はあまりなくって、背の低い草木と砂が目立つ。

鳥の巣が近くにあるんだろうか、小鳥がたくさん飛んでいる。
左手は眼下に長野の街並みが、右手は穂高連峰。斜面が常に横にいる感じで、油断ならない。
どんどん暖かくなってきたせいもあって、とても活動しやすい。
ついつい、遠くまで行ってしまいそうになるけれど、片道3~40分くらいで切り上げ。
深入りは禁物だ。







折り返して山荘に戻ったのが15時半。

晩御飯まで時間があるということで、仮眠をとることに。
疲れが溜まっていたしね。
敷布団をしいて、寝袋を広げて、すやあ・・・・・。
16時半頃に目が覚める。
ずいぶん深く眠ってしまった。しばらくもぞもぞ。
何か大事なことを忘れている気がする。
なんだろう、と思いながら、30cm四方程の窓から外を見て気が付いた。
「夕焼けだ!!!!」
しまった、そういえば夕焼けを見るとかいうイベントをすっかり忘れていた!!
爆睡してる相方を起こして、服を着込んで急いで外に出ると

はい終わってましたーー!!
泣いた。ちくせう、失念していたんだぜ・・・。
登山客がどんどん山荘に帰って来る。いったいその目にどんな光景を焼き付けたんですかみなさん。
まあ、、、仕方ない。また今度見にこよう。朝焼けは絶対見るぞ!
で、時間的にはちょうど晩御飯。
チェックイン時に渡されたチケットを持って、食堂の入口に並ぶ。
16時50分になって、みんなで共同の食堂にIN。
山小屋だから当然、色んなテーブルにみんなで相席。この雰囲気も、また楽しい。
晩御飯はハンバーグとかサラダとか、白ごはんにお味噌汁!
みんなで手分けしてご飯をよそったり、お味噌汁を注いだり。
なんか合宿みたいで楽しいぞこれ。

そしていただきます。とても、とても、美味しい。
実は素泊まりにするのも考えてたけれど、これはご飯付きにしといて正解だった!
想像以上にちゃんとしたご飯だったし、一日歩いた後に自炊するのも中々大変な気もする。
仮に2日で5食分用意するとなると、それだけで結構な量になるし、それだと絶対初日のすきやきなんてできなかったし。
今後も積極的に山小屋うまく利用していこう。
ご飯を食べた後は、寝支度と、明日の準備をしてから、お待ちかねの天体観測をすることに。
ちなみに山小屋では翌朝の準備は前日の早いうちから済ませておくのがルールらしい。
寝てる人がいる横でがさがさ音を出すのはNGだものね。
靴を履いて、外に出るために扉を開けた瞬間、
「あ、これあかんやつや」
ってわかった。これ、寒すぎるやつや。
考えられる最大限あたたかい装備に着替えて再トライ。
うん、さっきよりはまし。それでもやっぱり寒いなあ・・・・。
山小屋以外には何一つ明かりが無いここは山の上だ。本当に暗い・・・
そして空を見上げれば、おそろしいくらいの星が敷き詰められていた。
しばらくぽかんとしていた。こんなに星を見たのは生まれて初めてかもしれない。
星座がはっきりと分かる。
プラネタリウムみたいだ、と思ったけれど、そもそもプラネタリウムが星空を模して作られてものなのだから、表現としては逆になるべきだ。
でも、作りものよりも、ずっと綺麗だ。

東に目をやると、眼下に広がる長野の街から、淡い光が浮かび上がってきてた。
間接照明の様にぽわっと光っている。
下界はすこし霧が出ているのだろうか。
安曇野市、松本市、長野市の場所がはっきりと分かる。
それぞれの間はペンキで塗りつぶしたような深い黒。
山荘から少し離れた地面に大の字で仰向けになって寝っころがってみた。
立ってるより少しあたたかいかも。
しばらく目を閉じてから目を開ける。

視界には星しかない。
結構な頻度で流れ星が見える。なんだろう、当然のように流れていく。
非日常なようだけれど、ここではこれが日常なんだろう。
そのまま10分くらい眺めていただろうか。
そろそろ寒さも限界と言うことで山荘に戻ることに。
これだけの装備なのにたった10分で凍えるなんて、おそろしいところだ・・・。
ふと周りに目をやると、何人かが同じように仰向けになっていた。なんだか、シュール。

山荘に戻って、歯を磨いて、服を着替えたら、もう就寝だ。
なんて健全なんだろう。8時にはもう寝ていたと思う。
てっきり山小屋らしく夜はみんなで語り合う、みたいなのがあるのかなーと思ってたから少し拍子抜け。
と言いつつ私自身、大阪からの移動と車中泊。そこからの登山と言うことで疲れていたのは事実。
深い深い眠りについた。
4時30分。
知らない天井だ。
しばらくぼーっと、現在の状況を認識するのに時間がかかる。いつものことだ。
ここは、そう、山小屋だ。燕岳に私はいる。
ぐっすり眠れたおかげで、頭がすっきりしてる。
寝る前のこめかみあたりの違和感もなくなっていた。この高度にもすっかり慣れたということだろうか。
周囲ではごそごそと音が聞こえる。みんな起き出したようだ。
9時前には寝ていたから、7~8時間睡眠はできたということだ。なんという健全っぷり。
さて、昨日の失敗を繰り返さないぞ私は。
ご来光を見る!
耐寒装備に着替えて、カメラを持って、外に出る。
おそろしく、寒い。実際の気温は分からなかったけれど、氷点下だろうな、と感じた。
風が吹くとまた寒い。

東の空を見ると、すこしだけ空が色づいていた。実際に日が昇るのは4~50分くらい先だろう。

それまで、じっくりと天体観測と、黒から青に染まっていく空を眺めていた。
他の登山客も続々と出てきた。
みんな、同じように東の空を眺めている。
最も気温が低い時間帯だ、みんな震えながら、今か今かと待ちわびる。
そして

ご来光。
まわりが一気に明るくなる。
山々が光を受けて輝き出し、反射した光が撹拌して、眼下の霧はライブ会場のスモークのように、せりあがってくる。
寒さに震えてたときと違い、みんなぱあっと雰囲気が明るくなって、太陽ってすげえ!って思った。

朝日を受けるテントがきれい。
こんな寒い中テント泊だなんて信じられない。でも、いつかやってみたい。

燕岳に目をやると、なんと頂上付近にちらほら人がいるのが見えた。
ご来光登山と言うやつか。すごい。



くまー

ご来光を楽しんだ後はお待ちかねの朝ごはん!
昨日いっぱい運動したせいか、身体がカロリー消費モードになってるのよね。
摂取したカロリーをエネルギーにどんどん変換するやつ。
だからお腹吹田シティ。寒いせいもあるか。

晩御飯と同じように、食堂でみんなでいただきます。
白ごはんうめえ。味噌汁あたたまる!
あたたかいご飯を食べられる有難味といったらない。
部屋に戻って、布団と寝袋を直して、出発。
ありがとう燕山荘!大変居心地の良い山小屋でした。
山小屋とは思えないくらい、快適だった。
時刻は7時。今から下山して10時には中房温泉口に着くだろうか。


うーん、せっかく来たんだから!
ということで再び北燕岳までアタックすることに。
行って帰るくらいの時間は十分あるはず。


昨日よりも空気が澄んでいる気がする。
朝の空気と言うやつだろうか。
高い高い秋の空、雲一つない。
登山客も全然いなくって、静かで、ゆっくりできて、リラックスできる。


同じ道なのに昨日とはまた違った感触だ。
そう、足が楽。
一度眠ってすっきりしたからかな。ずっとクリアな気分で登ることができた。

燕岳を通って、そのまま北燕岳まで。
さらにもうちょっと先までチャレンジ!ということで、山頂にザックを置いて、身一つでプチアタック。
なるほど、ザックも何も背負ってなかったら、いくらでも動ける気がした。
岩場もなんのその。バランス崩したり、ザックをぶつけるリスクがないから、ずっと楽だ。
やっぱり自転車と同じで、小型軽量ってのは、有利に働くものね。
山頂に戻って、時間があったから朝のコーヒーを楽しむことに。

コッヘルにペットボトルの水を注いで、クッカーで煮沸。気圧が低いから、沸点も低め。
穂高連峰に乾杯。

ああ、幸せ。
山荘に戻ったのが9時くらい。
ここから一気に高低差1.300mを下る。


これがなかなか脚に来ると言うか、前ふとももがパンパンになるというか
膝への負荷がすごいというか、正直登りよりも辛かった!

斜度が急なものだから、自然と身体が前のめりになってしまうのを必死に抑えながら、踏ん張りながらの下りだったものだから、つらくてつらくて。
それでも他の登山客と比べるとまあ平均くらいだったかしら。
速い人は軽いフットワークでひょいひょい降りていく。身軽だなー。何が違うんだろ。
ストック持ってる人はなかなか楽そうだった。
持ってなくても速い人もたくさんいたけど。

おおよそ2時間半かけて、無事に下山。
登山口に着いた時には相方と思わずハイタッチ。
まさか下山でこんなに達成感があるとは。
それにしてもつっかれたー!!
正直許されるならフルサスペンションのMTBで楽しく下りたかった()
でもつらい先にはご褒美がある。
そう、ここ燕岳登山口は中房温泉。温泉である。
というわけで、登山口横の温泉になだれこむ。立地が神。
ここが源泉かけ流しの大露天風呂で、もうね、めちゃくちゃ気持ち良いの。
「ああ“~~~」って呻らざるをえない。
露天風呂から眺めるはアルプスの山々と、抜けるような青い空。
木々は色づき、秋模様。
ここが極楽浄土か・・・。

お風呂上りは、売店でアイスを買って、外でいただく。
いやー、幸せ成分溢れ出てるわー。
車に戻って、服を着替えて、靴を履きかえて、帰路に。
来るときは真っ暗で気付かなかったけれど、安曇野から中房温泉までのこの道もなかなかどうして風光明媚。

渓谷になってて、景色がダイナミック。紅葉もきれいで、箕面みたい。

普通に猿もいるし、ほんと箕面みたい。
せっかくだから!ということで大王わさび農場に立ち寄ることに。

くまー
長野県と言ったら蕎麦、野沢菜、豆腐、わさび!
さわびの葉っぱの天ぷらと、蕎麦をいただく。

うまー。
ついでにわさびソフトクリームとかいうやつ。

これまたうまー。
大阪までは再び450kmのドライブ。
長野、岐阜、愛知、滋賀、京都と5県をまたいで大阪に到着したのが19時頃。
都会のビル群を見てもしばらく違和感しかなかった。
あのアルプスの景色を見た後では、全部作り物に見えてしまう。(100%作り物ですありがとうございました)
3日ぶりの布団はありがたさしかなかった。
計画から準備、実行まで時間がかかってしまったけれど、天気に恵まれて最高のアルプスデビューを果たすことができた。
こんな経験をしたら、夢中になる予感しかしない。
自転車を始めた時とおんなじだ。
なんとなく手探りで始めたけれど、気付いたらすっかり夢中になってしまって、気付いたら全国津々浦々走り回っていた。
知識も、経験も、道具も、どんどん積み重なっていく。
きっと登山もそんな楽しさを提供してくれるに違いない。
次は、どの山を登ろうか。
おわり。
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