【中部ツーリング】2日目 白川郷発ヒルクライム三昧。乗鞍ゲート事件の発端と顛末【白川郷~乗鞍】
イベント, オフ会, 自転車, 機材紹介, ロングライド, キャンプツーリング, 聖地巡礼, 中部,
むくり。
知らない天井だ。
いや、天井……じゃない、テントだ。
昨日はテントを張って、そこで寝たんだ………
両サイドに朔ちゃんとキャプたんがいる………
そうだ、ここは白川郷だ。
道の駅白川郷。
少しずつ目が覚めてきた。
長い一日が始まる

知らない天井だ。
いや、天井……じゃない、テントだ。
昨日はテントを張って、そこで寝たんだ………
両サイドに朔ちゃんとキャプたんがいる………
そうだ、ここは白川郷だ。
道の駅白川郷。
少しずつ目が覚めてきた。
長い一日が始まる

久しぶりのテント泊だったけど、意外とぐっすり眠ることができた。
やはりそれなりに疲れていたということだろうか。でも、身体に重さは感じない。
テントから外に出てみる。寒い。
夏であることを忘れさせるのには十分な気温だった。
20度を少し下回るくらいだろうか。
標高が高いことと、まわりを山に囲まれた盆地だということも関係しているのかしら。
川も近い。
時刻は5時くらい。
まわりにいたキャンパー達はみんな起きて、ご飯を食べたり撤収作業をしている。
早いな、と思ったけど、私も一人旅をしていたときは、日の出と共に走り出していたことを思い出し、少し懐かしい。
あたりを少し散歩してみる。
霜……じゃないな、霧?
朝露というやつだろうか。
ずいぶん低いところにもやがかかって、あたりは真っ白だった。
とても静かで、なるほど、これが白川郷の朝なのだなと、少し感動。
自販機で暖かいコーヒーを買って飲んでみた。美味しい。
まさか8月に暖かいコーヒーを飲むことになるなんて。
冬はどうなるんだろう。
テントに戻ると、2人共まだ寝ていた。
ふむ。そろそろ起きてもいい頃だろう。
iPhoneのアラームを1分後に設定し、待つ。
鳴る。
起きた。
おはよう!!
さあさあ、2日目のスタートである。
テントを撤収し、後片付けをする。
立つ鳥、跡を濁さず。
テントと一緒に送られてきた服に着替えて、昨日走って汚れたエーリカジャージをテントと一緒に段ボールに詰める。梱包完了!

郵便局まで移動し、荷物を発送、としたいところだけど、まだ時刻は7時。
営業開始時刻である9時まで郵便局の裏に荷物を隠し、それまでは昨日見れなかった白川郷を散策することに。

突然の入江診療所


さすがにこの時間は観光客もいない。朝の静謐な空気に包まれる合掌造り群を、ゆっくり堪能することができた。
昨日行けなかった神社にきてみた。
そう、古手神社である。

りかあああああああああああああああああああああああああああ
この朝の古手神社の雰囲気ときたら、一級の厳かさがあった。
夏だというのに空気はピンと張りつめていて、吸い込む空気がどこか懐かしい、草と土のにおい。
神社を覆う木々の間から突き抜ける朝日、その光の筋と、照らされた祠に目を奪われてしまった。



お賽銭と旅の無事を祈願し、神社を後にする。
旅の無事というのは、結局のところ、ちゃんと叶えてくれたのかな。
“あのトラブル”を乗り越えてこうして文章を書いている今なら、そう、思える。
その後はすこし自由時間。
みんなそれぞれ好き勝手動くことにした。




私は写真を撮るために、村の中心部へ。
昨日、撮りたいと思っていたアングルがあったけれど、観光客が多くて撮れなかったポイントだ。
朝はまだ誰もいない。よしよし。

広角で撮影した後、望遠側に切り替える。
それが終わるとまた広角に戻し、途中で中望遠に移行する。
百聞は一見にしかず、ということわざにあるように、画角をいろいろ変えないと見えないものもあるというのは、私の持論ということにしておこう。
写真は構図が命だ。
次に露出。
「写真は光の芸術」という言葉によると露出が優先だし
「写真は切り取ること」という言葉によると構図が優先なんだろうけどそんな言葉はどうでもいい。
撮りたいように撮ればいい。
けれど、好みと言うか傾向はあると思う。
その人の写真をたくさん見ていると、癖がだんだん浮き彫りになってくる。
それは個性と言えるかもしれないし、長所だったり、あるいは短所だったりするかもしれない。
ある人には魅力であるし、ある人には減点対象になるかもしれない。
結局のところ写真を評価するというのは、絶対的な基準に基づいたものではなく、撮った人と、見る人の相性の問題だと思う。
少し構図を変えて、道路を入れてみる。

すると、ファインダー越しにロードバイクに乗る人の姿が見えた。
自転車に見覚えがある。
けれど同行してる2人ではない。
もしや、と思って、ファインダーから目を離し、顔をあげてみる。
向こうもこちらに気が付く。確信した。フォロワーだ。
九州のフォロワー、こーへーさんである!
富山に実家があるらしく、帰省したついでに、白川郷まで走りに来たとのこと。
実は出発前に、日程が被ることから会えるかもしれないとやり取りはしていたのだ。
挨拶をかわして、談笑。
大阪と九州の自転車乗りが、ここ白川郷で初めて対面する。
なんとも不思議な縁だ。
写真の話をしたり、自転車の話をしたり、ペロペロしたりペロペロされたり^q^

かっこいい
そうこうしているうちにキャプたん合流。どうやら知ってはいるもよう。

ツーショット
せっかくだからとしばらくご一緒することになった。
観光観光!!
それにしても、朔ちゃんが見当たらない。
キャプたんに聞いても分からないとのこと。
これはもしや………神隠し!!!(デーン
なんてことはなく、しばらくして無事に合流。
川遊びをしていたもよう。
フラグ立てすぎでしょ。



昨日とは違う光景を期待して、再び展望台まで登ることに。

確かに、雨上りの夕方とは違う、綺麗に澄んだ空気に包まれた白川郷がそこにはあった。


ありがたやありがたや………
くだってからすこーし時間があったからまたまた自由行動。
といっても、他の3人を待たせて、私だけあそびまわっていたもよう。
せっかくの白川郷だ。
使える時間を全部使って散策したい。
意識的にゆっくり回って、空気感を堪能してきた。







郵便局が開く時間に合わせて移動する。
その前に出発前の補給を。
昨日からお世話になりっぱなしのデイリーヤマザキさん。
郵便局では昨日担当してくださった方が手続きをしてくれた。
郵便局員「昨日はよく眠れた?」
私「はい、結構眠れました。でも、寒いっすね」
郵便局員「そうだねぇ。それくらいが取り柄だねえ」
私「そんなことないですよ。いいところでした、ほんと。」
と、とりとめの会話をして後にする。
大阪までの送料1,400円。
テントをかついで走ることを思えば安い安い。
それにしても大阪から送る時より100円安かったのはどうしてだろう。
そして、この日の走行がスタートした。
割とマジでデッドオアアライブなライドになるとはこの時誰に予想できただろうか。
オヤシロサマノタタリガry


国道360号線、通称「越中西街道」を通って飛騨に抜ける山越えルートである。
その後高山方面に南下して、乗鞍を登る。
さすがにこんな道をとおる車は少なく、3人で快適にゆっくり登る。
斜度は6%といったところ。ゆっくり登ればこわくない。
木々が多く、日陰が多いのが助かった。
時刻は10時前後。午前中だし標高も高いけれど、走れば当然暑いものは暑い。
しばらく登っていると、滝が見えてきた。

これは・・・なかなか・・・・!!
ものすごい水量だ。
思う、これだけの水を蓄えている自然ってすごいなぁと。
土が肥えているおかげだろう。
多少日照りが続いても、これだけの水が蓄えられている。
この水が、流れ流れて太平洋まで続いているとおもうと、胸があつくなる。

滝まで距離があったものの、前に立っているだけで身体を冷やすことに成功。
涼しいねー。
ここから頂上までが思ったよりも長かった。
というか、標高1,000m行かない程度だろうなーと思ってたのに、この天生峠、なるほど標高1,289mじゃねーの。



なんとかクリアー!!


うおおおおおおおおおおおおお。ちなみにこの峠、冬季はもちろん通行止めだと思う。
注意しよう。
ここからひたすらダウンヒルをしながら東へ進み、高山本線沿い、国道41号線に合流する。

途中にあった商店の前にこんな嬉しいサービスが

うひょおおおおおおおおおお水が垂れ流し。
きっと川から水を引いているだけなんだろう。
それが嬉しい!!
ボトルにこのキンキンに冷えた水を入れて、頭から被る。最高~
アームカバーやヘルメットも冷やす。

くうううう。生き返った。
それにしても暑い。
標高500m越えなのに。
太平洋側はどんなことになってるんだろう。



途中「道の駅アルプ飛騨古川」でお昼ごはん!若鶏の照り焼き丼、ウマウマ
ついでに出来る限りの水分補給。
しないとしぬ。
休憩所で少しだけ休憩して、再スタート。
実はあまり時間的余裕がなかった。
この日のお宿は乗鞍にあるのだ。
登るしかない。それも明るいうちに、だ。
今いる地点が標高500mで、乗鞍頂上が2,700m。単純計算でまだ2,200m登らないといけない。
オラ、わくわくすっぞ!!

高山方面に南下し、途中から東に進路を変更する。
県道89号線を使ってショートカット。
地味なアップダウンが始まる。
その後国道158号線に合流し、ここで最後のコンビニ休憩。
高山市最東端のコンビニであり、これ以降はしばらく登場しないと思う。
道の駅みたいなのはあるけれど。
そしてここからは、ひたすら登り。
平地がいっさい出てこない(ここまでもたいがいだったけど)
登りは他人とペースを合わせるのがとても難しい。
相手のペースを感じ取り、コントロールする能力によほど長けていない限り、前を引くことはできない。
もし一緒に走るなら、基本的に速い人が遅い人の後ろにつく。
それはそれで、前を走る人にプレッシャーになるかもしれないし、結局のところ個々の力で走るのがベストなのだ。(もしくはマスタング方式)
というわけで、ここで離散。私は自分のペースで登ることにした。
一人旅の開始だ。
あとの2人には頑張ってもらうしかない。
正直、かなりしんどいと思うけれど。
最初はいいものの、10km程走ると、それなりにきつくなる。
具体的に言うと斜度が10%近くなる。
しかもこの国道、やたらと交通量が多い。
たまらなくなって歩道を走る機会もあった。それでもまだ10kmだ。
あと30kmは登ることになる。
楽しい!
自然と笑顔になる。
暑いけど、楽しい。
この先に絶景が待っていると思うと。
あの念願の乗鞍が。
うんたんうんたん登っていき、ようやく平湯に到着。
ここから国道を外れて、乗鞍スカイラインまの入口まで行くことができる。


もちろん登り。ここにきてぐぐっと斜度があがり、10%を下回ることがなくなった。
うひょう。
荷物を積んでいるせいで、いつもよりずっと重いけれど、ここまでくるとあまり関係ない気がする。
ペダリングを変えればいいだけだ。
キャンプツーリングをしていた時を思うと、まだ軽い。

ひいこら言いながら乗鞍スカイラインの入口に到着。
ここで標高1,500m。まだ1,200m登る。
これより上は、きっと別世界だ。
途中にゲートがあって、おっちゃんに停められる。
ちゃんと管理しているんだなぁと思ってとまると、衝撃的な言葉が。
ここから先は、今回のツーリング最大のトラブルと、それを乗り越えるまでの紆余曲折の記録である。
おっちゃん「君、今回は何の目的?」
私「えーっと、ツーリングです。」
おっちゃん「今日の行先は?」
私「乗鞍です。頂上を越えて、松本側に少し下ったところに宿を取ってるんです。」
おっちゃん「そっか。実は通行止めなんだよここ。」
私「えっ?・・・・・・・・・・・ええーーーーー!!!!????」
私大混乱。
なになになにが起こったのここどこだっけ私はだれだっけなんでここにいるのいきさきはどこなのドコドコドドコドコ
どうやら、このゲートでいわゆる「足切り」を行っているらしい。
夜真っ暗になるこの乗鞍スカイライン。
当然、夜間走行は許されない。
しかも、この乗鞍、そんじょそこらの峠とはレベルが違う。
先は長く、遠い。
だから、
「通常のサイクリストが頂上まで行って下るまでにかかる時間」
が暗くなる時間にあたらないように、時間を逆算してこの最初のゲートで足切りを行っているらしい。
そのタイムリミット、15:30。
みんな、覚えておくんだ!!「15:30」だ!!!!
私が着いた時間は15:50。
でも私、当然このまま登るつもりだったし、登らないと宿までたどり着けないから交渉スタート。
「いや、でも困ります。この先に宿も取ってますし、私の脚なら時間内に登れます!」
今おもうとむちゃくちゃ言ってるなーと思う。
けれど、この時はね、そんなどころじゃなかったのよ。
しばらく交渉した後
「うーん、仕方ないね。急いで登ってよ。この先に第二ゲートがあるから、そこに引っかかったら、戻されるからね」と、許可を獲得。
奇跡。
ペース的には問題ないと判断できた。
一応、平均よりは速く登る自信はある。それにしても第二ゲート足切りもあるとかどこのプロレースだよ・・・
でも、さすがの私も気付く。あとの2人がいる。置いていくわけにはいかない。
登るのはきっぱりとあきらめて、ゲート横のベンチに座り込む。
もうだめだ。やってしまった。下調べが足りなかった。
しかしそんな情報どこにあっただろうか。
少なくともここに来るまで一度も見なかった。
しかし、どうしよう。お宿は予約してしまっている。
一応電話してみるものの、とても忙しそうだし、キャンセルされると困るよ~と泣きつかれる。
くそう、泣きそうだぜ。
じゃらん経由だからキャンセル料云々はじゃらんとの交渉次第だろう。
ゲートのおっちゃんに事情を話してみる。同情してくれたし、いろいろ提案してくれたけれど、やはり打開策が・・・。
あとの2人が到着するまでおっちゃんといろいろ考えた。
①お宿の人に連絡して、車で迎えに来てもらう。
3人と自転車3台を運べるかどうか。。。
⇒電話してみるものの、夕ご飯の準備で手が離せないとのこと。それはそうだ、仕方ない。
(もしかすると私達3人の晩御飯は用意しなくてよくなるかもしれないけれどね!)
②お宿はあきらめて、下ったところにある平湯温泉のどこかに泊まる。
⇒お盆真っ盛りのこの時期に当日3人泊まれるかどうか・・・。保留
③高山まで引き返す。町までいけば何とかなるだろう。
悔しさしか残らない。
④平湯温泉にバスターミナルがあるから、そこで誰かに事情を話して、何かしら打開策を得る。
⇒やはりこうするしかないか………バス会社に交渉したり、ワゴンタクシーを頼んだり。
⑤いったん平湯まで下って、そこから安房峠を越えて、白骨温泉を経由し、松本側からお宿まで登る
⇒ぐるっとまわる必要があるため50kmはあるうえに、登りだけで1,000mは越えそう。
私の脚でもかなりキツイ。
あとの2人がまだ来ていないことを考えると、ペース的にお宿への到着は22時くらいになるだろう。
どれも厳しい。
私、無理を承知で、おっちゃんに頼んでみたのが、
「ゲート横に停まってるその車で私たちを上まで上げて欲しい」という。
きっと個人所有の車だ。他の従業員さんのものかもしれない。
でも、さすがにしぶられた。どうみても軽トラックだし、3人乗るスペースなんてない。
君1人だったらいい、と言ってくれた。
それだけで嬉しい。おっちゃん大好きだ。
さらにうんうん悩んだ。あとの2人がこんな話をきいたらどう思うだろう。
今頃かなり苦しんでるはず。
さすがにそれから自走で宿までは無理だろう。
宿のキャンセル料も苦しい。
温泉付き、朝ごはん、晩御飯付きの今回のツーリング最大の贅沢、おひとりさま8千円也。
すると、おっちゃんが口をひらいた。
「わたしにも、君くらいの息子がいる。こういう風にトラブルに巻き込まれていたら助けてやりたい気持ちはある。だから、うちに来るか?高山に家がある。もう1台車があるから今から家に電話して、誰かに迎えに来させよう。たいしたものは出せんけど、ご飯も食べさせてあげれるし、お風呂もあるから疲れはとれる。さすがに布団は用意できんけど、リビングはあるし雑魚寝くらいはできる。そして、明日朝ごはん食べて、また乗鞍に挑戦すればいい。」
私、泣きそうになった。なんて優しい。初対面の私にどうしてここまで。
しかし、これは乗り切るしかない。
頼りたいのは山々だけど、明日も仕事のおっちゃんにご迷惑をおかけするわけにはいかない。
そんなおり、2人が到着した。
時刻は17:00前。
私が到着してから1時間ちょっと。
これは足切りゲートがなくても厳しかっただろう。
ルート設定が間違っていた。
二人に事情を話す。
さすがにおいおいまずいんじゃないのという表情。ハハハ
そしてやはり自走は厳しいとのこと。
今まで散々坂を登ってきたんだ。当然だ。
ちょうどこの時、ゲートの上から自転車乗りが下ってきた。
荷物満載のキャンプツーリストだ。
そして、何か気付いたようにこちらに目を向ける。
急ブレーキ。
なんと、このタイミングでフォロワー登場。
いやいやいやいやタイミング悪いよ!w
このトラブルの中あらわれた突然のフォロワー。
というかなんでこんなところで会うのよww
「もしかしてつむりさんですか」「あ、はい」こわいこわい。
今おもうと、失礼な対応をしてしまったかも。
だってね、いっぱいいっぱいだったのよ。余裕がなかった。ごめんなさい。
悩んでも時間が経つだけだし、先ほどの
④「平湯温泉まで下ってバスターミナルでなんとかする!」
にすることにした。
最後におっちゃんに最大限のお礼を伝える。
一緒に悩んでくれたおっちゃん、家に泊まれと提案をしてくれたおっちゃん、ありがとう。
一気に下る。
下りしかないから速い速い。
さらにアドレナリンが出ていたから速い速い。
やると決めたからには行動は早い方がいい。
早くしないと、選択肢がどんどん狭まる予感がした。
20分ほど下って平湯温泉に到着。
おお、思ったよりも大きな場所だ。これならなんとかなるかもしれない・・・!
一番大きなバスターミナルへ行き、情報収集と交渉をスタートした。
近くのバス会社の人っぽい恰好をしたオッチャンに話しかけてみる。
事情を話すと、あらあらやっちまったなぁという表情。ハハハ
解決策としては、この先の安房峠を越えるだけなら、この後すぐ出るバスに乗れば行けるよとのこと。
ただ本当にすぐの発車だったから、とてもじゃないけど輪行袋に自転車を詰める時間もなさそうだ。
さすがにお宿の方まではバスは出てないらしい。
「あ、回送バスがあるから、それに乗せてもらえば?タクシー代わりにさあ」
この人、なかなか破天荒だ。
でも、交渉する価値はあるから、交渉してみたけど玉砕^q^
ちくしょう。
時刻は18:00をまわる。
くっ、一気にバスが減り始めた。
この時、駐車場の端に一台のバンが止まっていることに気付いた。
結構大きい。4人は乗れそうだし、後ろのスペースに自転車3台くらいは入りそうだ。
ナンバープレートを見てみると、飛騨ナンバー。地元の人か。
ドライバーがちょうど降りてきたから駄目元でお願いしてみる。
ダンディなおっさんだ。
今までの事情を話し、困っていること、この先のお宿までなんとか行かなければならないということを伝えた。
すると、なんと「この先の中ノ湯までなら連れてってあげるよ」
ヒ ッ チ ハ イ ク 成 功 !
中ノ湯は、安房トンネルを越えたところ。
安房トンネルは、安房峠を登らずに突っ切ることのできるトンネル。
ただしこのトンネル、自転車は通行不可能なのだ。
安房峠を越えられるだけで万々歳だ。
この峠さえ超えれば、宿まで20km程しかないのだから。
お礼を言い、3人で乗り込んだ。
輪行袋は使わずに自転車はそのまま重ねる。
多少の傷なんて気にしない>コルナゴC50
車しか通れない安房トンネルを走り抜ける。
あぁありがたやありがたや………首の皮一枚つながった。
これでなんとかお宿までたどり着けそうだ。
中ノ湯に到着し、車から降ろしてもらう。

ありがとうおっさん!飛騨のダンディなおっさん!
お礼をいい、再スタート。
その前にお宿の人に電話し、なんとか無事に着けそうという旨を伝える。
良かった、気をつけてね。と。
こみあげてくるものがあった。
ルートは二つ、このまま国道を158号線を南下し、途中から白骨温泉経由。
もしくは少し遠回りだけど、白骨温泉を回避し、ぐるっとまわるコース。
グーグルマップでは後者の方が距離は長いけど、なんとなく登りは少なそう。
近くのバス停にいたおっちゃんに聞いてみる。
おっちゃんと呼ばれる人が登場するの何回目だ。
どうやら白骨温泉コースはそれなりに登りがあるらしい。
すこし遠回りだけど坂が少ないコースを選ぶことにした。
おっちゃん「まあ迷うこともないさ。次の信号を右だよ」
私「次の信号…?」
おっちゃん「10kmくらい先にあるよ」
私「10km()」
走り出す。
そして「次の信号」までのこの国道158号線が常に下り!!
10kmを走り抜けるのにかかった時間は12分。
はやすぎワロタ。
もうだいぶ暗くなっていた上にトンネルが多かったからすこしこわかった。
路面のギャップも多くって。
こういう時、やっぱり25Cタイヤだと安心できる

ちょうど10kmほど下ったところで信号発見。
右折。
この時、すでにあたりは真っ暗。
この季節のこの時間ならもう少し明るくてもいいはずなのだけれど、さすが山間部といったところ。
全員、ライトをフル点灯させて突き進む。
頭の中はごはんと風呂だ。はやく宿に着きたい。
2人共割と満身創痍だろうか、あまりペースが上がらない。
朔ちゃんは後から分かったけれどハンガーノックだったもよう。あるある。
結局最後の10kmは1時間弱かかっただろうか。
真っ暗闇の中、いくつかの坂を越え、宿に着く頃にはもうボロボロだったように思う。
でも、楽しい。
なんかわくわくしていた。
それはきっと乗鞍だからだ。
標高1,500mのお宿。なかなか体験できない!
ちょっと古風なロッジ、半木造の建物が私たちを迎えてくれた。
入口の引き戸を開けると横に広い玄関があってすぐに廊下が左右に伸びている。
靴箱の上にはずいぶん古い絵や、熊の置物、観光案内パンフレット等が置かれている。
すこし硫黄のかおりがするのは、温泉だろうか。
温泉宿とは聞いていた。
すみませーんというと、宿の主人が迎えてくれた。
無事にこれて良かったねと言ってくださった。
いやほんとうそのとおりです。
2Fの部屋に通される。ごはんの準備ができたら呼ぶから、と。
通された部屋はどこか懐かしい雰囲気のする和室だ。
3人とも大きく息をはき、なんとかたどり着けて一安心。

荷物を置き、ようやくリラックスできた。
本当はお風呂に入りたかったけど、お腹が空いて仕方がなかった。ご飯の準備ができたと聞こえた時には飛んで喜んだ。そうだよ、はらぺこだよ。


1Fの食堂に行くと、ご飯が!ご飯がー!!!!!!

うっひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
本当に、本当に嬉しい。
もうお腹と背中が引っ付いてるもの。一体成型だよ。
しかもただのご飯じゃない。
とても美味しそうなものだらけ。
この時ほどいただきますに力が入ったのは四国カルストで飢え死にしそうになった時以来かも。
ありがたく噛みしめる。
生き返る。
一通り生き返った後は、みんなで温泉。
そう、ここには温泉がある。硫黄の。
この硫黄がものすごく硫黄で、換気せずに入ると死ぬタイプの硫黄()
いや、気持ち良かったです。
日焼けした首筋に染みわたるうううううううう

はい。
部屋に戻って寝る・・・・
前に、せっかくこんな標高の高いところにいるんだからと外へ。
玄関で突然白いかたまりが

!?


お宿の番犬でした。
こやつの登場シーンはすさまじかったです。
目にも止まらない速さで、もう荒ぶりのキワミ状態でした。
気を取り直してはじめようか天体観測。
2013年8月13日がペルセウス座流星群が一番よく見える日だったらしくこの日も、その流星群かは分からないけれど、たくさんの流れ星が見えた。
都会じゃ絶対見られない光景にしばし見蕩れる。
でもさすが標高が高いだけあって、ずっと見ていると寒くなってきた。そりゃそうだみんな浴衣だ()
部屋に戻って、いよいよ就寝。
本来の予定であれば、この日に乗鞍を登って、明日は松本方面に下る予定だったのだけれどトラブルで登れなかったから乗鞍頂上は明日挑むことに。
ついに念願の乗鞍だ。
頂上にたどり着いた後、どうするか、それは明日決めよう。
どうにかなるさ。
他の2人はまだ決めかねているようだったけれど、とにかく今日は身体を休めることに専念すべきだ。
白川郷を出発したのが何日も前のことのように思えた。
この旅も一週間くらい続けているのではないかと錯覚する。
今回の旅で最も濃密な一日が終わった。
続く
2日目 走行距離125km 獲得標高2,890m
その3へ
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中部,
やはりそれなりに疲れていたということだろうか。でも、身体に重さは感じない。
テントから外に出てみる。寒い。
夏であることを忘れさせるのには十分な気温だった。
20度を少し下回るくらいだろうか。
標高が高いことと、まわりを山に囲まれた盆地だということも関係しているのかしら。
川も近い。
時刻は5時くらい。
まわりにいたキャンパー達はみんな起きて、ご飯を食べたり撤収作業をしている。
早いな、と思ったけど、私も一人旅をしていたときは、日の出と共に走り出していたことを思い出し、少し懐かしい。
あたりを少し散歩してみる。

霜……じゃないな、霧?
朝露というやつだろうか。
ずいぶん低いところにもやがかかって、あたりは真っ白だった。
とても静かで、なるほど、これが白川郷の朝なのだなと、少し感動。
自販機で暖かいコーヒーを買って飲んでみた。美味しい。
まさか8月に暖かいコーヒーを飲むことになるなんて。
冬はどうなるんだろう。
テントに戻ると、2人共まだ寝ていた。
ふむ。そろそろ起きてもいい頃だろう。
iPhoneのアラームを1分後に設定し、待つ。
鳴る。
起きた。
おはよう!!
さあさあ、2日目のスタートである。
テントを撤収し、後片付けをする。
立つ鳥、跡を濁さず。
テントと一緒に送られてきた服に着替えて、昨日走って汚れたエーリカジャージをテントと一緒に段ボールに詰める。梱包完了!

郵便局まで移動し、荷物を発送、としたいところだけど、まだ時刻は7時。
営業開始時刻である9時まで郵便局の裏に荷物を隠し、それまでは昨日見れなかった白川郷を散策することに。

突然の入江診療所


さすがにこの時間は観光客もいない。朝の静謐な空気に包まれる合掌造り群を、ゆっくり堪能することができた。
昨日行けなかった神社にきてみた。
そう、古手神社である。

りかあああああああああああああああああああああああああああ
この朝の古手神社の雰囲気ときたら、一級の厳かさがあった。
夏だというのに空気はピンと張りつめていて、吸い込む空気がどこか懐かしい、草と土のにおい。
神社を覆う木々の間から突き抜ける朝日、その光の筋と、照らされた祠に目を奪われてしまった。



お賽銭と旅の無事を祈願し、神社を後にする。
旅の無事というのは、結局のところ、ちゃんと叶えてくれたのかな。
“あのトラブル”を乗り越えてこうして文章を書いている今なら、そう、思える。
その後はすこし自由時間。
みんなそれぞれ好き勝手動くことにした。




私は写真を撮るために、村の中心部へ。
昨日、撮りたいと思っていたアングルがあったけれど、観光客が多くて撮れなかったポイントだ。
朝はまだ誰もいない。よしよし。

広角で撮影した後、望遠側に切り替える。
それが終わるとまた広角に戻し、途中で中望遠に移行する。
百聞は一見にしかず、ということわざにあるように、画角をいろいろ変えないと見えないものもあるというのは、私の持論ということにしておこう。
写真は構図が命だ。
次に露出。
「写真は光の芸術」という言葉によると露出が優先だし
「写真は切り取ること」という言葉によると構図が優先なんだろうけどそんな言葉はどうでもいい。
撮りたいように撮ればいい。
けれど、好みと言うか傾向はあると思う。
その人の写真をたくさん見ていると、癖がだんだん浮き彫りになってくる。
それは個性と言えるかもしれないし、長所だったり、あるいは短所だったりするかもしれない。
ある人には魅力であるし、ある人には減点対象になるかもしれない。
結局のところ写真を評価するというのは、絶対的な基準に基づいたものではなく、撮った人と、見る人の相性の問題だと思う。
少し構図を変えて、道路を入れてみる。

すると、ファインダー越しにロードバイクに乗る人の姿が見えた。
自転車に見覚えがある。
けれど同行してる2人ではない。
もしや、と思って、ファインダーから目を離し、顔をあげてみる。
向こうもこちらに気が付く。確信した。フォロワーだ。

九州のフォロワー、こーへーさんである!
富山に実家があるらしく、帰省したついでに、白川郷まで走りに来たとのこと。
実は出発前に、日程が被ることから会えるかもしれないとやり取りはしていたのだ。
挨拶をかわして、談笑。
大阪と九州の自転車乗りが、ここ白川郷で初めて対面する。
なんとも不思議な縁だ。
写真の話をしたり、自転車の話をしたり、ペロペロしたりペロペロされたり^q^

かっこいい
そうこうしているうちにキャプたん合流。どうやら知ってはいるもよう。

ツーショット
せっかくだからとしばらくご一緒することになった。
観光観光!!
それにしても、朔ちゃんが見当たらない。
キャプたんに聞いても分からないとのこと。
これはもしや………神隠し!!!(デーン
なんてことはなく、しばらくして無事に合流。
川遊びをしていたもよう。
フラグ立てすぎでしょ。



昨日とは違う光景を期待して、再び展望台まで登ることに。

確かに、雨上りの夕方とは違う、綺麗に澄んだ空気に包まれた白川郷がそこにはあった。


ありがたやありがたや………
くだってからすこーし時間があったからまたまた自由行動。
といっても、他の3人を待たせて、私だけあそびまわっていたもよう。
せっかくの白川郷だ。
使える時間を全部使って散策したい。
意識的にゆっくり回って、空気感を堪能してきた。







郵便局が開く時間に合わせて移動する。
その前に出発前の補給を。
昨日からお世話になりっぱなしのデイリーヤマザキさん。
郵便局では昨日担当してくださった方が手続きをしてくれた。
郵便局員「昨日はよく眠れた?」
私「はい、結構眠れました。でも、寒いっすね」
郵便局員「そうだねぇ。それくらいが取り柄だねえ」
私「そんなことないですよ。いいところでした、ほんと。」
と、とりとめの会話をして後にする。
大阪までの送料1,400円。
テントをかついで走ることを思えば安い安い。
それにしても大阪から送る時より100円安かったのはどうしてだろう。
そして、この日の走行がスタートした。
割とマジでデッドオアアライブなライドになるとはこの時誰に予想できただろうか。
オヤシロサマノタタリガry


国道360号線、通称「越中西街道」を通って飛騨に抜ける山越えルートである。
その後高山方面に南下して、乗鞍を登る。
さすがにこんな道をとおる車は少なく、3人で快適にゆっくり登る。
斜度は6%といったところ。ゆっくり登ればこわくない。
木々が多く、日陰が多いのが助かった。
時刻は10時前後。午前中だし標高も高いけれど、走れば当然暑いものは暑い。
しばらく登っていると、滝が見えてきた。

これは・・・なかなか・・・・!!
ものすごい水量だ。
思う、これだけの水を蓄えている自然ってすごいなぁと。
土が肥えているおかげだろう。
多少日照りが続いても、これだけの水が蓄えられている。
この水が、流れ流れて太平洋まで続いているとおもうと、胸があつくなる。

滝まで距離があったものの、前に立っているだけで身体を冷やすことに成功。
涼しいねー。
ここから頂上までが思ったよりも長かった。
というか、標高1,000m行かない程度だろうなーと思ってたのに、この天生峠、なるほど標高1,289mじゃねーの。



なんとかクリアー!!


うおおおおおおおおおおおおお。ちなみにこの峠、冬季はもちろん通行止めだと思う。
注意しよう。
ここからひたすらダウンヒルをしながら東へ進み、高山本線沿い、国道41号線に合流する。

途中にあった商店の前にこんな嬉しいサービスが


うひょおおおおおおおおおお水が垂れ流し。
きっと川から水を引いているだけなんだろう。
それが嬉しい!!
ボトルにこのキンキンに冷えた水を入れて、頭から被る。最高~
アームカバーやヘルメットも冷やす。

くうううう。生き返った。
それにしても暑い。
標高500m越えなのに。
太平洋側はどんなことになってるんだろう。



途中「道の駅アルプ飛騨古川」でお昼ごはん!若鶏の照り焼き丼、ウマウマ
ついでに出来る限りの水分補給。
しないとしぬ。
休憩所で少しだけ休憩して、再スタート。
実はあまり時間的余裕がなかった。
この日のお宿は乗鞍にあるのだ。
登るしかない。それも明るいうちに、だ。
今いる地点が標高500mで、乗鞍頂上が2,700m。単純計算でまだ2,200m登らないといけない。
オラ、わくわくすっぞ!!

高山方面に南下し、途中から東に進路を変更する。
県道89号線を使ってショートカット。
地味なアップダウンが始まる。
その後国道158号線に合流し、ここで最後のコンビニ休憩。
高山市最東端のコンビニであり、これ以降はしばらく登場しないと思う。
道の駅みたいなのはあるけれど。
そしてここからは、ひたすら登り。
平地がいっさい出てこない(ここまでもたいがいだったけど)
登りは他人とペースを合わせるのがとても難しい。
相手のペースを感じ取り、コントロールする能力によほど長けていない限り、前を引くことはできない。
もし一緒に走るなら、基本的に速い人が遅い人の後ろにつく。
それはそれで、前を走る人にプレッシャーになるかもしれないし、結局のところ個々の力で走るのがベストなのだ。(もしくはマスタング方式)

というわけで、ここで離散。私は自分のペースで登ることにした。
一人旅の開始だ。
あとの2人には頑張ってもらうしかない。
正直、かなりしんどいと思うけれど。
最初はいいものの、10km程走ると、それなりにきつくなる。
具体的に言うと斜度が10%近くなる。
しかもこの国道、やたらと交通量が多い。
たまらなくなって歩道を走る機会もあった。それでもまだ10kmだ。
あと30kmは登ることになる。
楽しい!
自然と笑顔になる。
暑いけど、楽しい。
この先に絶景が待っていると思うと。
あの念願の乗鞍が。
うんたんうんたん登っていき、ようやく平湯に到着。
ここから国道を外れて、乗鞍スカイラインまの入口まで行くことができる。


もちろん登り。ここにきてぐぐっと斜度があがり、10%を下回ることがなくなった。
うひょう。
荷物を積んでいるせいで、いつもよりずっと重いけれど、ここまでくるとあまり関係ない気がする。
ペダリングを変えればいいだけだ。
キャンプツーリングをしていた時を思うと、まだ軽い。

ひいこら言いながら乗鞍スカイラインの入口に到着。
ここで標高1,500m。まだ1,200m登る。
これより上は、きっと別世界だ。
途中にゲートがあって、おっちゃんに停められる。
ちゃんと管理しているんだなぁと思ってとまると、衝撃的な言葉が。
ここから先は、今回のツーリング最大のトラブルと、それを乗り越えるまでの紆余曲折の記録である。
おっちゃん「君、今回は何の目的?」
私「えーっと、ツーリングです。」
おっちゃん「今日の行先は?」
私「乗鞍です。頂上を越えて、松本側に少し下ったところに宿を取ってるんです。」
おっちゃん「そっか。実は通行止めなんだよここ。」
私「えっ?・・・・・・・・・・・ええーーーーー!!!!????」
私大混乱。
なになになにが起こったのここどこだっけ私はだれだっけなんでここにいるのいきさきはどこなのドコドコドドコドコ
どうやら、このゲートでいわゆる「足切り」を行っているらしい。
夜真っ暗になるこの乗鞍スカイライン。
当然、夜間走行は許されない。
しかも、この乗鞍、そんじょそこらの峠とはレベルが違う。
先は長く、遠い。
だから、
「通常のサイクリストが頂上まで行って下るまでにかかる時間」
が暗くなる時間にあたらないように、時間を逆算してこの最初のゲートで足切りを行っているらしい。
そのタイムリミット、15:30。
みんな、覚えておくんだ!!「15:30」だ!!!!
私が着いた時間は15:50。
でも私、当然このまま登るつもりだったし、登らないと宿までたどり着けないから交渉スタート。
「いや、でも困ります。この先に宿も取ってますし、私の脚なら時間内に登れます!」
今おもうとむちゃくちゃ言ってるなーと思う。
けれど、この時はね、そんなどころじゃなかったのよ。
しばらく交渉した後
「うーん、仕方ないね。急いで登ってよ。この先に第二ゲートがあるから、そこに引っかかったら、戻されるからね」と、許可を獲得。
奇跡。
ペース的には問題ないと判断できた。
一応、平均よりは速く登る自信はある。それにしても第二ゲート足切りもあるとかどこのプロレースだよ・・・
でも、さすがの私も気付く。あとの2人がいる。置いていくわけにはいかない。
登るのはきっぱりとあきらめて、ゲート横のベンチに座り込む。
もうだめだ。やってしまった。下調べが足りなかった。
しかしそんな情報どこにあっただろうか。
少なくともここに来るまで一度も見なかった。
しかし、どうしよう。お宿は予約してしまっている。
一応電話してみるものの、とても忙しそうだし、キャンセルされると困るよ~と泣きつかれる。
くそう、泣きそうだぜ。
じゃらん経由だからキャンセル料云々はじゃらんとの交渉次第だろう。
ゲートのおっちゃんに事情を話してみる。同情してくれたし、いろいろ提案してくれたけれど、やはり打開策が・・・。
あとの2人が到着するまでおっちゃんといろいろ考えた。
①お宿の人に連絡して、車で迎えに来てもらう。
3人と自転車3台を運べるかどうか。。。
⇒電話してみるものの、夕ご飯の準備で手が離せないとのこと。それはそうだ、仕方ない。
(もしかすると私達3人の晩御飯は用意しなくてよくなるかもしれないけれどね!)
②お宿はあきらめて、下ったところにある平湯温泉のどこかに泊まる。
⇒お盆真っ盛りのこの時期に当日3人泊まれるかどうか・・・。保留
③高山まで引き返す。町までいけば何とかなるだろう。
悔しさしか残らない。
④平湯温泉にバスターミナルがあるから、そこで誰かに事情を話して、何かしら打開策を得る。
⇒やはりこうするしかないか………バス会社に交渉したり、ワゴンタクシーを頼んだり。
⑤いったん平湯まで下って、そこから安房峠を越えて、白骨温泉を経由し、松本側からお宿まで登る
⇒ぐるっとまわる必要があるため50kmはあるうえに、登りだけで1,000mは越えそう。
私の脚でもかなりキツイ。
あとの2人がまだ来ていないことを考えると、ペース的にお宿への到着は22時くらいになるだろう。
どれも厳しい。
私、無理を承知で、おっちゃんに頼んでみたのが、
「ゲート横に停まってるその車で私たちを上まで上げて欲しい」という。
きっと個人所有の車だ。他の従業員さんのものかもしれない。
でも、さすがにしぶられた。どうみても軽トラックだし、3人乗るスペースなんてない。
君1人だったらいい、と言ってくれた。
それだけで嬉しい。おっちゃん大好きだ。
さらにうんうん悩んだ。あとの2人がこんな話をきいたらどう思うだろう。
今頃かなり苦しんでるはず。
さすがにそれから自走で宿までは無理だろう。
宿のキャンセル料も苦しい。
温泉付き、朝ごはん、晩御飯付きの今回のツーリング最大の贅沢、おひとりさま8千円也。
すると、おっちゃんが口をひらいた。
「わたしにも、君くらいの息子がいる。こういう風にトラブルに巻き込まれていたら助けてやりたい気持ちはある。だから、うちに来るか?高山に家がある。もう1台車があるから今から家に電話して、誰かに迎えに来させよう。たいしたものは出せんけど、ご飯も食べさせてあげれるし、お風呂もあるから疲れはとれる。さすがに布団は用意できんけど、リビングはあるし雑魚寝くらいはできる。そして、明日朝ごはん食べて、また乗鞍に挑戦すればいい。」
私、泣きそうになった。なんて優しい。初対面の私にどうしてここまで。
しかし、これは乗り切るしかない。
頼りたいのは山々だけど、明日も仕事のおっちゃんにご迷惑をおかけするわけにはいかない。
そんなおり、2人が到着した。
時刻は17:00前。
私が到着してから1時間ちょっと。
これは足切りゲートがなくても厳しかっただろう。
ルート設定が間違っていた。
二人に事情を話す。
さすがにおいおいまずいんじゃないのという表情。ハハハ
そしてやはり自走は厳しいとのこと。
今まで散々坂を登ってきたんだ。当然だ。
ちょうどこの時、ゲートの上から自転車乗りが下ってきた。
荷物満載のキャンプツーリストだ。
そして、何か気付いたようにこちらに目を向ける。
急ブレーキ。
なんと、このタイミングでフォロワー登場。
いやいやいやいやタイミング悪いよ!w
このトラブルの中あらわれた突然のフォロワー。
というかなんでこんなところで会うのよww
「もしかしてつむりさんですか」「あ、はい」こわいこわい。
今おもうと、失礼な対応をしてしまったかも。
だってね、いっぱいいっぱいだったのよ。余裕がなかった。ごめんなさい。
悩んでも時間が経つだけだし、先ほどの
④「平湯温泉まで下ってバスターミナルでなんとかする!」
にすることにした。
最後におっちゃんに最大限のお礼を伝える。
一緒に悩んでくれたおっちゃん、家に泊まれと提案をしてくれたおっちゃん、ありがとう。
一気に下る。
下りしかないから速い速い。
さらにアドレナリンが出ていたから速い速い。
やると決めたからには行動は早い方がいい。
早くしないと、選択肢がどんどん狭まる予感がした。
20分ほど下って平湯温泉に到着。
おお、思ったよりも大きな場所だ。これならなんとかなるかもしれない・・・!
一番大きなバスターミナルへ行き、情報収集と交渉をスタートした。
近くのバス会社の人っぽい恰好をしたオッチャンに話しかけてみる。
事情を話すと、あらあらやっちまったなぁという表情。ハハハ
解決策としては、この先の安房峠を越えるだけなら、この後すぐ出るバスに乗れば行けるよとのこと。
ただ本当にすぐの発車だったから、とてもじゃないけど輪行袋に自転車を詰める時間もなさそうだ。
さすがにお宿の方まではバスは出てないらしい。
「あ、回送バスがあるから、それに乗せてもらえば?タクシー代わりにさあ」
この人、なかなか破天荒だ。
でも、交渉する価値はあるから、交渉してみたけど玉砕^q^
ちくしょう。
時刻は18:00をまわる。
くっ、一気にバスが減り始めた。
この時、駐車場の端に一台のバンが止まっていることに気付いた。
結構大きい。4人は乗れそうだし、後ろのスペースに自転車3台くらいは入りそうだ。
ナンバープレートを見てみると、飛騨ナンバー。地元の人か。
ドライバーがちょうど降りてきたから駄目元でお願いしてみる。
ダンディなおっさんだ。
今までの事情を話し、困っていること、この先のお宿までなんとか行かなければならないということを伝えた。
すると、なんと「この先の中ノ湯までなら連れてってあげるよ」
ヒ ッ チ ハ イ ク 成 功 !
中ノ湯は、安房トンネルを越えたところ。
安房トンネルは、安房峠を登らずに突っ切ることのできるトンネル。
ただしこのトンネル、自転車は通行不可能なのだ。
安房峠を越えられるだけで万々歳だ。
この峠さえ超えれば、宿まで20km程しかないのだから。
お礼を言い、3人で乗り込んだ。
輪行袋は使わずに自転車はそのまま重ねる。
多少の傷なんて気にしない>コルナゴC50
車しか通れない安房トンネルを走り抜ける。
あぁありがたやありがたや………首の皮一枚つながった。
これでなんとかお宿までたどり着けそうだ。
中ノ湯に到着し、車から降ろしてもらう。

ありがとうおっさん!飛騨のダンディなおっさん!
お礼をいい、再スタート。
その前にお宿の人に電話し、なんとか無事に着けそうという旨を伝える。
良かった、気をつけてね。と。
こみあげてくるものがあった。
ルートは二つ、このまま国道を158号線を南下し、途中から白骨温泉経由。
もしくは少し遠回りだけど、白骨温泉を回避し、ぐるっとまわるコース。
グーグルマップでは後者の方が距離は長いけど、なんとなく登りは少なそう。
近くのバス停にいたおっちゃんに聞いてみる。
おっちゃんと呼ばれる人が登場するの何回目だ。
どうやら白骨温泉コースはそれなりに登りがあるらしい。
すこし遠回りだけど坂が少ないコースを選ぶことにした。
おっちゃん「まあ迷うこともないさ。次の信号を右だよ」
私「次の信号…?」
おっちゃん「10kmくらい先にあるよ」
私「10km()」
走り出す。
そして「次の信号」までのこの国道158号線が常に下り!!
10kmを走り抜けるのにかかった時間は12分。
はやすぎワロタ。
もうだいぶ暗くなっていた上にトンネルが多かったからすこしこわかった。
路面のギャップも多くって。
こういう時、やっぱり25Cタイヤだと安心できる

ちょうど10kmほど下ったところで信号発見。
右折。
この時、すでにあたりは真っ暗。
この季節のこの時間ならもう少し明るくてもいいはずなのだけれど、さすが山間部といったところ。
全員、ライトをフル点灯させて突き進む。
頭の中はごはんと風呂だ。はやく宿に着きたい。
2人共割と満身創痍だろうか、あまりペースが上がらない。
朔ちゃんは後から分かったけれどハンガーノックだったもよう。あるある。
結局最後の10kmは1時間弱かかっただろうか。
真っ暗闇の中、いくつかの坂を越え、宿に着く頃にはもうボロボロだったように思う。
でも、楽しい。
なんかわくわくしていた。
それはきっと乗鞍だからだ。
標高1,500mのお宿。なかなか体験できない!
ちょっと古風なロッジ、半木造の建物が私たちを迎えてくれた。
入口の引き戸を開けると横に広い玄関があってすぐに廊下が左右に伸びている。
靴箱の上にはずいぶん古い絵や、熊の置物、観光案内パンフレット等が置かれている。
すこし硫黄のかおりがするのは、温泉だろうか。
温泉宿とは聞いていた。
すみませーんというと、宿の主人が迎えてくれた。
無事にこれて良かったねと言ってくださった。
いやほんとうそのとおりです。
2Fの部屋に通される。ごはんの準備ができたら呼ぶから、と。
通された部屋はどこか懐かしい雰囲気のする和室だ。
3人とも大きく息をはき、なんとかたどり着けて一安心。

荷物を置き、ようやくリラックスできた。
本当はお風呂に入りたかったけど、お腹が空いて仕方がなかった。ご飯の準備ができたと聞こえた時には飛んで喜んだ。そうだよ、はらぺこだよ。


1Fの食堂に行くと、ご飯が!ご飯がー!!!!!!

うっひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
本当に、本当に嬉しい。
もうお腹と背中が引っ付いてるもの。一体成型だよ。
しかもただのご飯じゃない。
とても美味しそうなものだらけ。
この時ほどいただきますに力が入ったのは四国カルストで飢え死にしそうになった時以来かも。
ありがたく噛みしめる。
生き返る。
一通り生き返った後は、みんなで温泉。
そう、ここには温泉がある。硫黄の。
この硫黄がものすごく硫黄で、換気せずに入ると死ぬタイプの硫黄()
いや、気持ち良かったです。
日焼けした首筋に染みわたるうううううううう

はい。
部屋に戻って寝る・・・・
前に、せっかくこんな標高の高いところにいるんだからと外へ。
玄関で突然白いかたまりが

!?


お宿の番犬でした。
こやつの登場シーンはすさまじかったです。
目にも止まらない速さで、もう荒ぶりのキワミ状態でした。
気を取り直してはじめようか天体観測。
2013年8月13日がペルセウス座流星群が一番よく見える日だったらしくこの日も、その流星群かは分からないけれど、たくさんの流れ星が見えた。
都会じゃ絶対見られない光景にしばし見蕩れる。
でもさすが標高が高いだけあって、ずっと見ていると寒くなってきた。そりゃそうだみんな浴衣だ()
部屋に戻って、いよいよ就寝。
本来の予定であれば、この日に乗鞍を登って、明日は松本方面に下る予定だったのだけれどトラブルで登れなかったから乗鞍頂上は明日挑むことに。
ついに念願の乗鞍だ。
頂上にたどり着いた後、どうするか、それは明日決めよう。
どうにかなるさ。
他の2人はまだ決めかねているようだったけれど、とにかく今日は身体を休めることに専念すべきだ。
白川郷を出発したのが何日も前のことのように思えた。
この旅も一週間くらい続けているのではないかと錯覚する。
今回の旅で最も濃密な一日が終わった。
続く
2日目 走行距離125km 獲得標高2,890m
その3へ
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