【RIDEAIDinSAKAMOTO】豪雨災害から3年を経た熊本県八代市坂元町を巡る旅路【後編】
RIDEAID, イベント, 九州, 自転車, 写真, 機材紹介, ロングライド,さて、ここで改めて紹介させていただきたいのがパピクロス代表の牧瀬さん。
過去にも何度もお世話になっていて、RIDEAID阿蘇を皮切りに縁が続いていて、とてもありがたい限り。「人がいるからこそできること」を続けているバイタリティあふれる方で、細やかで頼もしく、それでいて気さく!
〜ここから後編〜
道の駅坂本の後は、球磨川沿いの鶴之湯旅館へ。旅館に向かう時に見た球磨川沿いの昨年からの変化は、護岸設備が流出していたところに、工事がなされていたこと。それでも両岸には流入した物ものが残っていて、被災時の時がそのまま止まっているような感覚にもなりました。
色々な思いが巡りながら鶴之湯旅館に到着。
イベントの日は曇り空とはいえ7月下旬、暑かった。到着してのすぐのおもてなしに歓喜。
やかんでのキンキンに冷えた麦茶のふるまい。次から次におかわりの手が伸びて、あちこちから生き返る~と聞こえてきます。
竹のサイクルラックも、いい感じです。
鶴之湯旅館。昭和29年に開業された69年目の木造3階建の旅館。様々な規制から今では作ることができない貴重な建物を被災後に再建されました。
館内にエアコンはなく、涼しい風が吹き抜ける心地よい空間です。源泉かけ流しの源泉は冷泉。美しいタイル風呂でいい感じの温度の足湯を楽しませていただきながら、お昼ご飯までクールダウン、最上のリラックスタイムです。
ご飯が炊けましたーの声が。羽釜炊きのご飯。無農薬自家栽培の貴重なお米。川の恵み、鮎も炭火でいい感じに焼き上がり、ご飯の準備が整いました。視覚と嗅覚からすでに美味しいことがわかり、テンションが上がります。
地元の恵で丁寧に作られた、贅沢な昼食、整いました。いただきまーすの後に、一瞬無言タイムがあり、美味しい、美味い、美味っの声が溢れます。
丸2日使ってつくられた、鮎の甘露煮。鮎の塩焼きも香魚と言われる鮎の風味を味わえる絶品。お漬物はひと月などなど、手間ひまかかった食材を丁寧に調理された食べ物たち。野菜やスイカまでもしっかりとした風味があって、あっという間に完食でした。シンプルながらも奥深く、丁寧な味の贅沢な昼食でした。
至高の食材を使い丁寧に作られた昼食のあと、鶴之湯旅館の館主が水害に被災した当時から今日まで、そしてこれからを語ってくださいました。
水はあっという間に水位が上がってきたこと。
床上2メートルほどまで水がきたこと。
水が引いた後一人で泥出しを始めたこと。
心配した友人が山越えで持ってきてくれたパンが最初の食事だったこと。
たくさんの方が来てくれて時間はかかりながらも宿を再開できたこと。
地元の被災した家屋から譲り受けた部材を使って工事をしたこと。
地元住民の歴史とともに今の宿が存在していてこれからも在り続けること。
3年という時の話をとても丁寧にしてくださいました。人の自然に対する無力さ、自然と共に生きる覚悟、協働することで創れる未来。心震わされるお話でした。
来年に土地の嵩上げ工事が予定されていて、数メートル上がるとのこと。工事が始まると1年ほど休館するそうで、創業以来の今の姿を今年中に見て欲しいと思いました。
鶴之湯旅館での昼食を終えて、宿の前で出発の準備。球磨川の流れはこの日も美しかった。館主からお話しいただいた工事後の未来に想いを馳せながら、出発の準備が進んでいきます。
球磨川の美しい流れを横目に次に訪れたのは、坂本町の中心街だったJR坂本駅へ。坂本駅の看板下にある赤テープが水に浸かった水位を示しています。
平時の川の水面からここまでの高さと空間を占める幅を考えると、途方もない水がここにあったことがわかります。
駅舎の壁に残る水の跡が水害があったことを示しています。ここでも、道の駅坂本の駅長に解説をいただきました。坂本町の中心地だった場所。八代市役所坂本支所、坂本郵便局、消防署、さまざまな商店などがあったとのこと。人の営みがあったことを示すものは駅舎のみでした。全て流され、残ったものも取り壊されたとのこと。今は、土地の嵩上げや護岸の工事のための資材置き場などとして、復興工事の拠点の一つとして利用されていました。駅舎内の肥薩線の線路は撤去され道になっていて、駅周辺は嵩上げ工事が始まっていました。
次に訪れたのは、坂本駅からほど近い、道の駅坂本の駅長の被災したご自宅。道の駅坂本の駅長にご案内いただきました。
自宅前の川の水が溢れ、これまでに経験したことのない水の増え方だったこと。被災後、道路が使えない中、大きく迂回しながら道の駅と自宅、避難先を移動しながら復旧作業にあたったこと。
コミサポひろしまというボランティアが現地入りして、このエリアの土砂出しをしてくれ家を蘇らせてくれたこと。その時の支援物資の一つ、コンテナは今でも残っていて、このコンテナは被災時、唯一のセキュリティが保てる設備としてとても役に立ったということ。
被災時は、コロナ禍真っ只中で県外のボランティア受け入れの問題など、難しい対応に地域の方々と調整するのに苦心したこと。
住めるレベルでの自宅の再興ができたが、基準により土地建物を嵩上げしなければならなく住居としては使えないこと。今は、コミュニティスペースとして活用していること。自然災害後の生活のリアルを目の当たりにして、たくさんの学びをいただきました。さまざまな想いが駆けめぐります。「ここに来て、話を聞いて何かを感じてもらえることに意味があると思っています。」との言葉に救われました。
道の駅坂本の駅長の被災したご自宅前の球磨川の支流でドボン。お昼をまわった1日の中でももっとも気温の高い時間帯。体を冷やすためにも、少年の心がワクワクします。道の駅坂本の駅長から「こんな大きな水害でしたが球磨川を悪くいう地元の人はいないんです。川と共に生きてきた。これからも川と生きて、息子も川で育てていきます。」そんな球磨川水系、私たちにも特大の笑顔をくれました。
ほどよくクールダウンした後は、旅を振り返りながら出発地点の新八代駅まで球磨川を眺めながらサイクリングして、終幕に向かいます。
今回は初めての取り組みとして、この濃密な体験を思い出す時間を作ってもらいたくてコーヒーをご準備。今回のコーヒーはサイクリストでもあるコーヒーロースターのROCKPOINT COFFEEに、特別にご準備いただいたスペシャルな自家焙煎のコーヒー豆。一人で振り返る、家族や友人に話しながら振り返る、どんな時にでも飲んでいただける逸品です。
自転車で走るだけではなく、水と人との共生、文化と食、人々の思いに触れるプログラムとして開催したRIDE AID in SAKAMOTO これにて終幕。
たくさんの方のご協力ご支援で開催できました。ほんとに、ほんとに、心からありがとうございました。また次のRIDE AID projectでお目にかかりましょう。 papicross代表 牧瀬美海
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