【山口県】下関ならぬ上関半島で稲荷神社や温泉に出会う自転車旅。

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今回の旅は大畠駅から始まります。

どうでしょう、もうすでに癒し成分が溢れかえっている。
広島駅から山陽本線で海沿いを南下していく。もちろん輪行で。岩国駅で乗り換えて徳山駅普通列車で。
それにしても朝の通勤ラッシュなぞどこ吹く風、電車内には人が少なく、まるで平日の昼下がりの図書館のような静けさとゆったりとした時間が流れていた。それだけでも都会のそれとはもう雰囲気が違いすぎるのだけれど、何より一番違うなと思ったのが私以外乗客の誰もがスマホを見ていないことだった。みんながみんな車窓から見える景色をただただ眺めている。私はなんだかスマホを見ていることが恥ずかしくなってしまって画面を閉じてポケットにしまった。そして皆と同じように窓の外に広がる周防灘の景色をただただ眺めるだけにした。この時間、この景色、これだけで旅気分は高まるというもので、もうすっかり私は気分が良くなってしまっていた。最近では自転車に乗ることよりもこうして旅気分を味わうこと、これが旅の中で大きなウエイトを占めるようになってきた。そのためにはでも自転車が必要だから、切っても切れない関係にあると実感する。
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大畠駅は山陰本線の中でもトップクラスに海が近い駅で、そこに至るまでの車窓もひたすら周防灘ブルーを眺めながらの列車旅ができる。写真の灯台は大畠駅のホームから見えるもので、こんな風景が広がっているなんてなんて素晴らしい駅だろう。天王寺駅や品川駅に分けてあげたい爽快さだ。

さて、今日の予定はただひたすらに南下すればいいだけのはず。左手に海を見ながら走ればそれでオッケーですと言わんばかりの地形。下の図は今回のツーリングルートをまとめたもので50秒くらいで完成した力作。これで伝えたいことの90%くらいを占めていると思う。これから書くのは残り10%のことなので興味のない人はこのままブラウザバックして頂いて大丈夫。
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けれどこの「なんにもない」部分が無ければ旅をする意味がないと私は思う。「なんにもない」を端折りたければレンタカーでも借りて涼しい車内でお気に入りの音楽を聴きながらナビを頼りに景色を楽しんでドライブすればいい。自転車で旅をするというのはそう言った便利さと一旦さよならしてアナログな世界に身を投じることだと私は思う。


ちなみに今回の旅先は、地図を眺めている時にふと「地形と地名が気になったから行ってみよう」と言うのがきっかけだった。本当を言うともう少し詳しい下調べというか準備あったし、過去に頭にインプットした膨大な数の地図があったからこそ見つけられたものでもある。旅をして面白そうな場所を見つける手法はいつだって直感とデータベース。サイクリングマップを見てそこに行くような単純さではない。それだと簡単すぎるし、エキサイティングじゃない。用意された献立通りに料理をするくらい無難だし得られるものも献立通りのものに過ぎない。でもこうして自分の感覚でたどり着いた場所、見つけた風景というのは何者にも代え難く、実際に走る前も、走っている最中も、そして走り終えた後も特別な場所として強烈に印象付けられる。ここに旅をする意味があると私は思う。


それにしても「なんにもない」
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けど「なんにもない」からこそこういうなんてことない風景に心打たれたりする。周防大島の山々とカーブミラーと愛車。ここにはこれしかない。けれどそれがいい。ちなみにサドルバッグには輪行袋とサコッシュ、輪行用のサンダルが入っている。フレームバッグにはKindleと財布、鍵、モバイルバッテリー、そしてサコッシュが入っている。なぜかサコッシュを二つも持って来てしまった。


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「なんにもない」区間はこうして過ぎていった。それなりに暑さを感じる気温だったけれど灼熱という訳ではなく過ごしやすい部類の暑さだった。今年は6月と言うのに今のところほとんど雨が降っていない。5月の嘘のような暑さといい、令和元年は天照大神様もちょっと本調子じゃない感じがしていて、またなんだか大きな災害が来そうな気がしてちょっとこわい。


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今回の旅で一番驚いたのが突如現れた「稲荷神社」。本当に何の前触れもなく。海が途切れ途切れて見える県道72号線を無心状態で走っているときに、10mほど坂を駆け上がるような道の途中にそれはあった。上関半島にこんな場所があるだなんて聞いたこともないしここに来るまで看板の一つも出ていなかった。それに地図を開いても現在地に表示されていない。神社なのにそんなことがあるんだろうか?と不思議に思いながらも自転車を降りてヘルメットを脱いで神社参拝をすることに。

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うん・・・どう見ても稲荷神社だ。朱色に染め上げられた鳥居、狭い間隔に幾つにも連なるそれは見間違いようがない。稲荷神社大好きマンの私が見間違うはずがない。けど。

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こんなにオーラを感じる・・・雰囲気のある・・・・時間の流れを嫌でも感じさせる稲荷神社は初めて見た。朱色とさっきは書いたけれど、これを朱色と表現するのは正直、間違っている。穀物が、木々が色づいて赤く変わっていく様を五穀豊穣の願いとかけて朱色とする稲荷神社の朱色も年月が経てばこの通り。日本国内に数万数十万となる神社仏閣をメンテナンスするのは大変難しいということがひしひしと伝わってくる。しばらくこの場に立ち尽くしてしまった。

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京都の伏見稲荷大社には何度も足を運んでいるけれど、あそこと比べたら何もかもが違う。外国人観光客なんてきっと1ヶ月に1人来るか来ないか・・・・いや、きっと来ないだろう。日本人の私ですら知らないんだから。それに場所が辺鄙すぎる。もう二度と訪れることはないと思う。


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もはや文字が消えて何神社かわからない。


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ギリギリ千、葉、と解読できる。



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唯一全部読み取ることができた比較的新しい札文字。「正一位千葉稲荷大明神」と記されていた。正一位、紛れもなく格式の高い伏見稲荷神社だ。けれど稲魂の神様もここに立ち寄ることは少ないかもしれない。神使である狐の像だけが新しく凛と建っているのが印象的だった。思えば先日の津和野と言い、昨年の角島〜萩と言い、山口県には特徴のある稲荷神社がものすごく多い。稲荷神社が大好きな私からすると羨ましい限りだ。

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上関に着くと猫が歓迎してくれた。もみあげから顎にかけての柄が面白い。逆イタリア半島みたいだ。


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この辺りまで来ると大畠駅と比べても明らかに水質が良くなっているのが見てわかる。うん、あっちも十分に綺麗だと思ったけれど、全然違う。透明度が違うし、海の色も青というよりはコバルトブルー、水色、ターコイズ、色んな色が混じり合って無限の色を作り出している。一言で「青」と表現することの虚しさを感じずにはいられない。

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あまりに綺麗な海は人工物と対比した時に少し不気味。


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今回密かに楽しみにしていたのがこちらの「室津灯台」と上関海峡。

「海峡あるところに灯台あり、灯台あるところに往来あり」

と言うように(ちなみにこれは私が勝手に言っている)このようなロケーションにおいては灯台が必ず建っていて、いわゆる岬型や港型とはまた違った役割を果たすこちらの灯台は昭和11年からその役割を果たしているそこそこ老舗の灯台。岩壁の上に建つその姿はスリムでまるでローソクみたいで可愛い。橋が近く海峡も狭いせいかちょっと窮屈な感じがするけれど、それもまたいい。何より道路からこれほど近く、道路が坂になっているおかげで同じ目線で灯台を観察することができると言うのも全国的に見て珍しい。つまり狭くて窮屈でスリムで可愛い。下関の関門海峡に比べれば船の往来は少ないけれど、窮屈と言うかコンパクトな分、大きな船が通った時の迫力が凄まじいのは呉近くにある「音戸の瀬戸」に通じるものがある。

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うーん!あの扉、いいですねえ!内部のフィルターも見学してみたいけれど、橋の上から覗いたら上手く見えるかもしれない。


灯台ハントを堪能したところで朝ごはんを食べて以来何も口にしていないことを思い出した。お腹すいたー!と言うことで灯台からすぐ近くにある「鳩子の湯」と言う温泉施設にお邪魔することに。
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なんでもここ上関半島にある皇座山の地質と瀬戸内海の海水と地下1,000mから汲み上げた天然温泉がいい感じに混ざり合ってなんともユニークな泉質を誇っているのだそう。そして併設しているレストランでは美味しいご飯が食べられるのだそう。と、聞いて私はもうこの日はもう走ることを諦めようと決意した。さっきの稲荷神社と言い灯台といい、もはや自転車はただの移動手段になった。旅をしよう。自転車は手段だ。乗ることよりも目の前のことを楽しむことにシフトしよう、と。


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!!

素晴らしい海鮮丼をいただきました。久しぶりにネタが多すぎてご飯が足りなくなると言う事態に陥る程度には食材たっぷりな豪華海鮮丼を頂いてしまって大満足・・・・。

その後は温泉をいただきました。もう、簡潔に書くと「最高」でした。源泉が濃すぎて温泉から上がってからふと爪の隙間を見ると黄色くなっていたのには思わず笑ってしまった。温泉上がりにはお約束の牛乳瓶一気飲みと休憩スペースで「テルマエ・ロマエ」を読みつつ30分ほどダラダラうたた寝をした。一見すると平日昼間から海鮮丼を食べて温泉に入ってローマ人もびっくりの堕落生活のように見えるけれど、まあ、その通りだった。


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せっかくだから上関大橋を渡って長島の方へ渡ってみた。渡ってみたのに特に理由はないけれど、海峡だし橋あるし灯台も見えたし、「じゃあ渡るか・・・・」くらいのノリで、結局渡ったところで「なんにもない」しかなかったけれど期待通りだから問題ない。


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海が綺麗すぎてこわいこわいメソッド。


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旅するつむりと旅するTADA車。



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うわ、めっちゃ汚いやんと思ったらこれめっちゃ綺麗なんですよね。綺麗すぎて汚く見えるってどう言うことよ。

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あの深さのクラゲが肉眼で見えるのすごいことよ。


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古い町並みと言われるエリアがあって、訪れてみたけれどまあ普通の町並みです。


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ただこのアングルから眺める灯台はエモすぎました。路地の隙間からチラッと見える赤い灯台。興奮。


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上関海峡と大橋。


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最後に紹介するのはこちらの四海楼。


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こんな建物、見たことがない。あれやこれやと語るまでもなく、実際に訪れればその建物の価値と魅力を知ってもらえると思う。山口県を訪れた際には是非立ち寄って欲しいスポットの一つ。

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あとは柳井駅まで走ってそこから山陰本線で輪行。
夕暮れの瀬戸内海はやっぱり綺麗だな、と当たり前のことを考えながら帰宅した。

終わり。


 


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